とりあえず思いつく本を挙げておきます

母になっても読書は日課。本の記録と紹介のブログです。(3ヶ月以内に出版されたものを「新刊」、概ね半年以内に出版されたものを「準新刊」としています)

森博嗣『孤独の価値』を読んで~自分の「孤独」を振り返る

私が中学生だったとき、同じ学年の別のクラスに、G.T.という女子生徒がいました。
はじめ私は直接の関わりがなかったのですが、色白で華奢で綺麗な子だったので、なんとなく目立つ存在でした。
更に彼女は、やたらグループで群れる女子とは対照的に、いつもどんな時も独りでいたのです。

教室移動やトイレの時も、体育や行事など集団活動の時もいつも独りで、笑ったところさえ見たことがありません。

噂に聞くところによると彼女は、小学生時代からイジメられていて、ハブ(仲間外れ)が定着しているようでした。
ですが本人は飄々としています。

あるとき選択授業のグループ分けというちょっとしたキッカケで、私はG.T.と話すようになりました。
陰がある暗い子という勝手なイメージでしたが、彼女は拍子抜けするほど「普通」でした。
相手の目をきちんと見て、面識の有無や男女の分け隔てなく淡々と会話ができる子でした。
かといって人に媚びるところもないのです。

後から実際のところを知りましたが、彼女は「必要以上にベタベタしたり、気に入らなければハブにしたり、そんな友達関係なら必要ない。学校は勉強しにきてるんだから、邪魔されたり危害を加えたりされなければ別に構わないし、こちらからは関わらない。」と割りきっていたのだそう。

私はG.T.のサッパリした考え方がとてもカッコいいと思いました。



現在、夏休み真っ最中です。

世間の多くの人は連日のように友達やファミリーと遊んだり、親戚で集まったり賑やかな場所に出掛けたり、楽しいバケーションを謳歌しているようですね。
会話の中で聞いたりSNSを通してだったり、ニュースなんかからも雰囲気で伝わってきます。

もちろん私も、友人知人に誘われて賑やかに過ごしたり家に遊びにきてもらったりすることは、全くないわけではありません。
友人ファミリーとBBQやキャンプを楽しむこともあれば、遠方(飛行機や新幹線の距離)から泊まりにきてくれる友達も全国にいます。
旅行にもよく行くほうかと思います。

でも、基本的には誰にも会わずに独りで、もしくは家族でひっそり静かに過ごすのが、性に合っているんですよね。
最近ではママ友なんかは適度に距離を置いていて、深入りしないようにしています。


更に今年は家でやる仕事が比較的多くて、気づけば独りで黙々と没頭していることに気付きました。
お盆で世間は楽しそうだけど、これってなんだか孤立しているみたい?これって寂しいことなのかな?と、ふと考えてしまいました。

そしてG.T.と自分の青春期のことをボンヤリと思い出していました。
私も結局、必要以上にベタベタしたりワイワイする時間や関係は、そこまで求めずに過ごしてきたのです。



森博嗣さんの『孤独の価値』を読みました。

孤独の価値 (幻冬舎新書)

孤独の価値 (幻冬舎新書)

森先生は現在、都会の喧騒を離れ、ほとんど人と会わずにヒッソリと暮らしているそうです。
買い物もネットだし、何年も公共交通機関を利用していないし、たった独りで趣味と仕事と研究に没頭していて「孤独」ですが、それがとてもたのしく幸せな暮らしなのだそう。

彼は本書で、次のようなことを主張しています。

・メディアやネットの影響などから、世間は「賑やかで楽しいのは良いこと」「孤独で寂しいのは良くないこと」のような風潮があるが、本当にそうだろうか?

・確かに人間が寂しさを厭うのは本能的なものかもしれないが、現代では一人になっても生きていくことはできる。

・そもそも「孤独」は人間だけにある崇高な概念。孤独や寂しさの中で人は思考したり何かに耽ったりできるし、芸術が生まれたりする。「わびさび」という美意識も「寂しさ」からきている。

・たった独りで何かに没頭するとき、孤独の寂しさよりも、本物の楽しさや感動を味わうことができる。現代人はもっと「孤独」の価値に目を向けるべきだ。


他にも「賑やかな楽しさ」と「孤独の寂しさ」をサインカーブとコサインカーブの振れ方で説明されていて、双方の関係を相対的にとらえているのが独特です。

この本は、私は概ね賛同できることが多い内容でしたが、どちらかというと「友達も知り合いもいるけれど、あえて一人でいることを好む」「まわりのしがらみから離れて一人になりたい」というような人向けかなと思いました。
「友達も肉親もいない」「自分で稼げなくて引きこもり」という、本当に社会から取り残された孤独な人には何の救いにもならないと思います。



結局「孤独」に価値が生まれるのは、「いざとなれば頼る人や親しい友人はいるけれど、自分の信念や生き方のために、好きで一人でいる人」の場合なのかなと思いました。

だからG.T.も、毅然としていてかっこよく見えたのかなと改めて振り返ります。
だから私も一人でいても焦ったことはないのかなと気付きました。



ところで私は、世間で忌み嫌われている「孤独死」って、むしろ理想的な最期ではないかと思っています。
そしたら森先生も「孤独死尊厳死」との言及をされていて、非常に嬉しく頼もしく思いました。

小学1・2年生の課題図書4冊~娘の感想

珍しく2日連続でブログ更新することができました(^^;




小学校初めての夏休みを迎えた娘が、読書感想文を書くと意気込んでいました。
まずは全国統一の課題図書を4冊、張り切って読んでいました。
もちろん私も自分で読みました。

なにぶん一年生なのでまだまだ薄い感想ですが、本人なりに色々感じたことがあるようです。

簡単なあらすじも書きましたが、その後に娘が実際に口で語った感想を、箇条書きで記録してあります。
会話に出てきた言葉を適宜母が要約しています。

もしかしたらネタバレと感じられる言葉があるかもしれません。


①『ルラルさんの だいくしごと』

ルラルさんがはしごで家の屋根にのぼり修理をしていたら、動物たちがはしごを持ち去ってしまいました。
屋根に取り残されたルラルさんは困ってしまいました。

・動物たちがはしごを持っていってしまって、ルラルさんはとても焦ったと思う。
・でもはしごで電車ごっこをするなんて、動物たちは無邪気でなんてかわいいんだろうと思った。
私なら怒る気持ちにならないかもしれない。
・屋根から降りられなくなったおかげて、ルラルさんは夕焼けを見ることができた。私も夕焼けとか夕方に散歩するのが好きだから、はしごがなくなったおかげでルラルさんはかえって良い時間を過ごせたと思う。屋根から見る夕焼けはきれいだろうな。



②『がっこうだって どきどきしてる』

こどもたちが来ることを用務員さんからきいて、ドキドキしている「がっこう」くん目線のお話です。
学校に行くのを嫌がる女の子がいて戸惑う「がっこう」ですが、ちょっとした出来事がきっかけで、こどもと学校の距離が縮まっていきます。

がっこうだって どきどきしてる

がっこうだって どきどきしてる

・給食を食べる男の子の場面で笑ってしまった。
・私の小学校はこの絵本の学校よりも大きいし子供も多いので、うちの「がっこう」は入学式にはもっともっとドキドキしていたと思う。でも毎日学校に子供が来るから、そのうち慣れてきて、自分も友達になったつもりでいるかも。
・だけど休み時間に「がっこう」は子供たちと一緒に遊べないし、皆が帰ったあとや休みの日は独りぼっちで、淋しいと思う。
・この前となりのクラスの窓ガラスが割れたので、私の「がっこう」は体の一部が壊れて痛かったはず。学校って子供がいて賑やかでたのしいこともあるけれど可愛そうなこともある。大切にしてあげなきゃなぁ。


③『なずずこのっぺ?』

独特の昆虫語で物語が進んでいきます。
虫たちとひとつの植物を、定点観測の視点で時間の移り変わりと共に描かれています。
昆虫語は意味不明なはずなのに、絵から文脈や感情を読み取れるのがこの作品の魅力のひとつだと気付かされます。

なずず このっぺ?

なずず このっぺ?

(昆虫語の滑稽さと絵のインパクトが強すぎて、うちの娘はストーリーを理解して味わうところまで到達できませんでした。)
・「なずずこのっぺ?」って意味が分からなくておもしろい。虫たちは本当にこんなふうに喋っているのかな?
・私たちが虫の言葉の意味が分からないのと同じで、虫も人間が何を喋っているのか分からないんだと思う。でも、怖がってるとか怒ってるとかは何となく分かってるかもな。
・イントネーションを変えたり、声色を変えたりして読むだけで、虫の気持ちが変わったみたいに聞こえる。(※イントネーション・声色という語彙は使っていません)



④『きみ、なにがすき?』

あなぐまは自分の庭に、どんな野菜畑を作ろうかと迷っていました。
友達の好きな喜ぶものを作ってあげようとひらめきましたが、それらは皆すでに持っていて、諦めざるを得ませんでした。
へそを曲げたアナグマくんでしたが、もっと別のことを思いついたようです。

きみ、なにがすき?

きみ、なにがすき?

うちの娘はこの本をとても気に入りました。
怒ったアナグマに対してハリネズミが言ったある言葉で、感動して泣きそうになったそうです。(ピュアだ…笑)
そして読書感想文はこの本に決め、一生懸命書いていました。

本人が初めてきちんと書いた思い入れのある作文ですが、まだ先生にさえ提出していないので、箇条書きであっても感想はまだちょっと控えておこうと思います(^^)

2018年7月の趣味の読書9冊と簡単な感想

7月は仕事のための資料の読み込みが6冊と、夏休みの子供達と共に児童書を大量に読むことが増え、自分の読みたい本があまり進みませんでした…。

それでも数えてみると、なんとか9冊(雑誌と漫画含む)は読んでいたので記録しておきたいと思います。


波頭亮『AIとBIはいかに人間を変えるのか』

AI(人工知能)とBI(ベーシックインカム)と人間社会の未来の真面目な話です。
学術書に近いノンフィクションかな。

かなり内容が濃くて勉強になりました。

これまでBI反対派だった私が、珍しく本の影響でガラッと意見を変えてBI賛成派になってしまったので、この本の感想は改めて書きたいと思っています。


②WRITERS PUBLISHING『毎日読みたい365日の広告コピー』

毎日読みたい365日の広告コピー

毎日読みたい365日の広告コピー

広告のキャッチコピーって、たった一言でハッとさせられたり考えさせられたり心を揺さぶられたりすることがあります。
コピーライターは魔術師のようです。

そんな秀逸な広告コピーが365本収録されており、季節や時期に合わせたチョイスがしてあるので一年中パラパラとめくっては楽しめるというコンセプトの本です。
月によって紙の色が異なっていたりして、装丁もお洒落です。

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ひとついうと、広告コピーは文字だけで見るのと、ビジュアルと合わせて見るのとでは、かなり印象や受け取り方が変わってしまいます。
きっと言葉そのもののもつ力に主眼を置いて本書は作られたと思いますが、やっぱりビジュアル含めた広告そのものを見てみたかったなぁというものが多くありました。


ちなみに私が好きだったのは、

あんたが生まれたことが
いちばんのニュースやった
日があるんよ。

(2008年 福井新聞社)


自分がちっぽけに思えたら、
その旅は、きっと正しい。

(2014年 H.I.S.)


入学式。
どこかに、一生の友達が
座っている。

(2014年 立教大学)


ふだんを変える。
それがいちばん
人生を変える。

(2010年 本田技研工業)


文句も知性があれば、提案になる。
(2013年 朝日新聞社)


一方で一番好きになれなかったコピーは、

逆風も、逆から見たら順風だよね。
(2010年 タフマン/ヤクルト本社)


森博嗣すべてがFになる』』

すべてがFになる (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)

ある研究所の密室で、起こるはずのない殺人事件が起こります。
描写とトリックが上手すぎて、背筋が凍りつきました。

本書は森先生のデビュー作で、今読んでいるWシリーズのために読みました。
デビュー作でこんな凄い作品を出して、いきなり受賞しちゃうなんてやっぱり凄いな。

密室で殺人が起きて犯人を探す…という小説ではありますが、普通のミステリーとは一味も二味も違いました。
天才vs天才対決という構図がまず独特で興奮します。
それから、登場人物の「存在」自体を根こそぎ疑わなくてはならない謎解きは、他のミステリーにはなかなかないと思いました。

森先生は「理系ミステリー」という独自のカテゴリーに分類されていますが、確かにトリックに理系の考え方も使われています。
だけど勿論、理系でなくても読めますよ。

理系ではない私ですが、「16進法」という話が出てきた瞬間に「すべてがFになる」の意味にピンときました。



④プレジデント 7/16号』

PRESIDENT (プレジデント) 2018年7/16号(山中教授の自分を変える)

PRESIDENT (プレジデント) 2018年7/16号(山中教授の自分を変える)

前回の記事に書きました。


⑤プレジデント 7/25号』
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資料術というより、プレゼンの特集に興味があって買いました。
プレゼンのスキルって、いわゆる"プレゼンテーション"の場面以外にも必要になってくるものだと常々感じています。

自己紹介も然り、講義や授業をするときも然り、会議でのちょっとした発言も然り、商談はもちろんのこと面接で自分を売りこむときでさえ、他者に何かを伝えて賛同や理解を得たいときにはプレゼンですよね。

ということで、定期的にプレゼンスキルについては勉強したくなります。


森博嗣女王の百年密室

ある謎のユートピアで起こる殺人事件。
でも私たちが暮らす社会通念とはかなり異なっているので、人の死や事件の扱われ方が独特の展開を見せてくれます。

「死とは何か?」「肉体とは何か?」「神とは何か?」「善悪とは何か?」といった哲学的な問いが、自然にストーリーに混ぜ混まれているのが森先生らしいです。

これは下手に感想を書いてしまうと、作品の価値を下げてしまいそうなので書きません。

何よりこのファンタジーのような世界観と、人間の醜悪のギャップが、とてつもなく好きでした。



⑦真弓定夫ほか(監)『いつか母になるために』』

一言でいうと、味噌は身体に良いという話を分かりやすく教えてくれる学習コミックです。

世界三大スープに日本の味噌汁が入っていないことが納得できない私、
もちろんほぼ毎日朝と晩は味噌汁がレギュラメニューです。

味噌が身体に良いことは日本人として知っていましたが、わざわざこのように本にして啓蒙しなくてはいけないというのは、日本の伝統的な食文化が継承されていないことの表れだと感じて残念に思います。

ただ、私はあらゆる食材に様々な効用はあると思っているため
味噌汁ばかりを取り沙汰して「味噌汁を飲もう!」という姿勢ではなく、やはり色々な食品の利点と不足点を知ったうえでまんべんなく活用できたらと思います。



⑧真弓定夫(監)『経皮毒 ナプキン編』』

こちらもコミックで、石油資源からできた紙ナプキンにより、体内に毒が取り込まれるという警鐘を鳴らしています。
女性の生理用「紙ナプキン」だけでなく、赤ちゃんの紙おむつの話にも触れられており、女性だけでなくお子さんがいる男性や、これから父母になるかもしれない方は知っておいてもよい内容かと思いました。

「紙ナプキンや紙おむつは身体に悪い」とは広く知られるところですが、具体的にどのような害があるのかがよく分かると思います。
一方で、頭では身体や環境への害が分かっていても、利便性を優先させてしまう事情が現代社会にあることも事実です。

例えば私は産後の肥立ちが悪くて身体を壊したうえ完全なワンオペ育児の時期があり、布おむつを洗う余裕など皆無でした。
いつか紙おむつによる害が出るかもしれないと頭では分かっていても、まずは今日を生きるために必死で、紙おむつに頼らざるを得ませんでした。

クーラーだってそうですよね。
電力を利用しすぎて環境破壊につながるとは分かっていても、今クーラーを使わなかったら熱中症で命に関わるかもしれない。

このようにテクノロジーや利器に慣れきってしまった私たちにとって、先々の健康のために手間のかかる生活を選択するのはとても大変なことです。
ただ、害を知ったうえであえて便利さを選ぶのか、知らずに選択の余地がないのかは、大きな違いだと思います。


⑨柞刈湯葉横浜駅SF』』

横浜駅SF (カドカワBOOKS)

横浜駅SF (カドカワBOOKS)

改築工事を繰り返す「横浜駅」が自己増殖を始めて数百年、日本列島のほとんどが横浜駅と化してしまった。
脳にsuicaを埋め込まれた人間が管理されて生きる「エキナカ」社会と、suicaを持たない駅外の人間が分断されている。
あるときsuicaを持たない主人公ヒロトが、ある使命のためにエキナカの旅に出ることになった。
果たして横浜駅の中には何があり、何が起こるのか?


、、、というSFファンタジーでした。

幼少から高校卒業までを横浜で育ち、通学に毎日横浜駅を使っていた私にとって、とても興味のもてる設定でした。
現実でも、横浜駅はいつもどこかしら工事をしているので、なんとも面白い発想のSFだと思ったのです。

しかし、設定が生かしきれず、私には物足りないストーリーでした。
その理由は一重に、主人公ヒロトが「なんとな~く」旅をして終わるだけ…という印象を受けたからです。

エキナカの旅は命懸けのはずが、ヒロトにはそこまでの強いモチベーションがないんです。
それなのに言われるがままに目的地を決め、困難がやってきても相手から去っていくというか何となく解決されてしまう。

用意されたシナリオ通りに進み、予定調和的なラストを迎えた感が否めませんでした。
続編もあるようですが、もう読まないと思います。
期待していただけに残念です。

7/16号のPRESIDENTがとてもよかった

森博嗣先生のWシリーズに気をとられてすっかり忘れていましたが、7/16号のPRESIDENTがとてもよかったので記録しておきます。

巻頭特集は『山中教授の自分を変える』、isp細胞の山中教授とユニクロ創業者の柳井正氏の対談です。

私はこれが一番の狙いで買いました。

PRESIDENT (プレジデント) 2018年7/16号(山中教授の自分を変える)

PRESIDENT (プレジデント) 2018年7/16号(山中教授の自分を変える)

内容は自己変革をテーマに語っているんですが、やっぱり山中教授が語ると重みを増すし心に響きます。

・すごい研究成果は、じゃんけんで10連勝するような運によるものだ
・壁を取り払い互いが見える「オープンラボ」の採用
・予想と異なる結果が出たら、失敗だと嘆くのではなく「面白いことが起きているのではないか」と検証できるかどうか
・ミスショットをしたあとの反応で伸びる子供がそうでないかが分かる
(延びない子は失敗を嘆くだけなのに対し、伸びる子は、、、)
・山中教授から見た村上春樹と彼の作品について

などなど、色々「フムフム」と思いながら読みました。


まぁ要は、私、山中教授が好きなんですよね。
かっこいいです。
ファンとかミーハーな意味ではなく、isp細胞でのノーベル賞受賞前後からニュースや研究のその後を追っていると、研究者らしいストイックな姿勢や謙虚なところに強くひかれます。

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それからもうひとつの特集『脳科学で問題解決!なりたい自分になる法』もおもしろかった。

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著作権の観点からボカシで

仕事に臨むうえでの心身や環境の整え方(調え方)を、脳のシステムという観点から何人かの専門家が解説しています。

・前向きになる、すべてがうまく回り出す「毎日のルーティン」
・ムリは禁物、体力いらず「大人の筋トレの王道」

・集中力、記憶力、認知力も上がる「科学的勉強法」
・生産力6倍アップ「スーパー段取り術」
・"好き"は見た目、"嫌い"は香りで決まる「男前テクニック」


私は素人の興味程度ですが脳の話が好きで、脳ミソの略図みたいなのを見るとウズウズするんですよね。
子育てなんかでも脳の働きを意識することがあります。
(例:ドーパミンセロトニンを使い分けて好き嫌いなく何でも食べる子に育てている、進んで勉強する子になるようにミラーニューロンに訴えるなど。笑)

なので、「これをすると脳のここが働く!」みたいな話は、新たな発見や復習になりました。
きっと有能な方々は脳なんて意識せずとも効率的な仕事ができるのだと思いますが、私のような要領のよくない人間はただ漫然とこなすよりも脳の働きを意識すると仕事の効率化が図れるのかもしれません。


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他にも時計の特集もたのしめました。
時計ブランドの最新の動向なんですが、「ほしい~!」とか「カッコイイ~!」とかではなく、別の意味でよかったと感じます。
持っているブランドの時計もいくつか載っていたのですが、最新のものと家にあるものを比較する視点で読んだので「やっぱり自分にとって時計はトラディショナルなデザインが一番いい」という価値観と好みを再認識し、時を刻む意味などを考えながら浸れました。


他にも小さなコラムや連載など、小記事もわりと関心のあるネタが多かったように思います。

新しく読みたい本も見つかりました。



2018年6月の読書8冊と簡単な感想~森博嗣Wシリーズ~

読めば必ずハマると言われる、森博嗣先生のWシリーズ。
現在出ている10冊のうち、6月に8冊を読みました。



おもしろすぎる‼
なんども徹夜しかけた‼
現代社会に生きる全ての人に、読んで、生命の在り方やAIの行き先を考えてほしい‼


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この物語の素晴らしいところは、今から約200年ほど未来の世界が舞台なのに、扱われているネタが全て、本当に起こりうる社会現象として現実味を帯びていることです。

キーワードとしては、細胞移植や脳内情報のインストールに始まり、人造人間、AI(人工知能)、クローン技術などなど、、、要するに生命に関する科学やテクノロジーの話が出てきます。
今まさに話題となっている技術で理論もきちんとしているため、「この先こうなるんだろうな」という臨場感がありました。

それに絡めてサスペンス、アクション、人情ドラマ、謎解きなんかがあるので、極上のエンターテイメントです。

そしてストーリーを楽しみながらも、

人類とは何か?
生命とは何か?
生きるとはどういうことか?

ということを、深く考えさせられる仕掛けや名言が随所に散りばめられているのです。


①彼女は一人で歩くのか?


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物語の舞台は西暦2200年代の社会です。

人間の細胞から新たな生命体を作り出すテクノロジーが定着した社会では、「ウォーカロン」という人造人間が人類と共存し活躍するようになりました。

ウォーカロンは人間とは全く区別ができない外見で、人間との違いは脳に情報(思考力や感情や性格など)をインストールしていることだけです。
意図的に倫理に反しない内容をインストールしているで、ウォーカロンは概して平和的で真面目で優秀です。

一方の人間も、身体にメモリチップを埋め込んだり、怪我や病気になっても健康な細胞に入れ換えたりできるようになりました。
肉体的なボディを作り替えることができるようになり、老化しても死なない生命体となったのです。

しかし新たな問題として、人類は生殖によって子供が生まれなくなるという新たな問題にもぶち当たりました。
世界政府や科学者達はそのことに危機感を抱き対策を考えながらも、生命の在り方や概念まで従来とは変わりつつあるのでした。

さて主人公ハギリは日本の工学博士です。
ハギリ博士は国の公的機関でウォーカロンと人間の違いを識別する方法の研究をしていて、職務として国内外へ出向いていきます。
その中で様々なトラブルや疑問にぶち当たりながら、あるときは少し変わった冒険もしながら、「人間とは?」「生命とは?」「生きるとは?」「これからの人類の行き先は?」という問題に対峙していきます。


②魔法の色を知っているか?


(前置きが長くなったので『彼女は一人で歩くのか?』と『魔法の色を知っているか?』の感想は省きます)

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③風は青海を渡るのか?

チベットのナクチュには、現在では珍しく貴重となった「出産」ができる人間の種族が保護されていることが分かり、ハギリは出向いていきます。
しかしナクチュは、今まさにウォーカロンの侵略を受けんとするところでした。

更にそんなナクチュの遺跡に、ドキッとするような過去の人類のあるものが保存されていることが分かったのです。
謎多きナクチュで過ごすうち、ハギリの頭にはは、長らく人類が抱えていた生殖に関するひとつの答えがひらめきます。

生命がどのように生まれるのか、その当たり前のようで当たり前でない神秘的なプロセスを考えさせられました。
秘密の航路で辿り着くナクチュという場所や、謎を抱えるキーパーソンにもドキドキしました。



④デボラ、眠っているのか?

また別の国で見つかった、巨大な人間の頭部を模したコンピュータ。
またまたハギリは謎の解明に関わっていきます。

この巻では、AI(人工知能)の進化を題材にしています。
AIは人間といかに共存していくのか?
AIは人間を越えるのか?
AIと人間の類似点と相違点とは?

個人的にもAIについては考えることが多々ありましたが、こうして森先生の小説のなかで語られると、AIと人類の在り方のポイントが分かりやすく具体的な形で理解できました。

また本書ではサイバー空間でのAI同士の攻防が繰り広げられていくのですが、そこから「なぜ戦うのか」という人間の本質的な疑問のひとつの答えを提示されています。

工学博士が「戦争」を語るとこうなるのか…と、新たな視点にしびれました。


(それから博士が"研究"という仕事について独白していたのもめちゃくちゃよかった。私ごときがおこがましくも全てに共感。)



⑤私たちは生きているのか?

「行ったら最後、誰も戻ってこれない」といわれる、アフリカ南部の"富の谷"という場所。
ここには、かつて脱走したウォーカロンがいるという噂を聞いたハギリは真相を知るべく出向いていきます。
そこには新しい生存の在り方が隠されていました。

肝心なところをネタバレしないように書くと、肉体を捨てて、バーチャルな世界で生きる人々に出会ったのです。

タイトルの通り、生きているとはどういうことなのか?
肉体のボディの存在意義は何なのか?と考えさせられます。

またハギリ一行はこの富の谷で、噂通り「一度行ったら戻ってこれなく」なる?…という、とても恐ろしい出来事に巻き込まれます。
知性を武器にした作戦が展開されます。

主題や描写、最後まで黒幕の正体に気付けなかった巧妙なトリックなどすべて含めて、私にとってはこの作品がシリーズ内でベスト2です。




⑥青白く輝く月を見たか?

北極の海底深くに沈み忘れ去られていた艦艇オーロラに、スーパーコンピュータが搭載されているという情報を入手したハギリ博士。
今度は北極海へと向かいました。

このスーパーコンピュータは思考を出力せず、いわば引きこもりの状態で、これ以上病むと暴走する恐れがあると指摘されます。
オーロラには核弾道が搭載されており、人類の脅威となる可能性があるのです。

そんな艦艇オーロラを調査していくなか、なんと約30年前に消息を絶った有人海底探査艦がすぐに近くで発見されたのでした。
そこに乗っていたはずの調査員と、オーロラに搭載されたスーパーコンピュータの関係に、謎は深まるばかり、、、。

自ら学び賢くなっていくAIと、人間の細胞や進化を比較し、この作品では「生きているとはどういうことか?」から更に、
「成長とは?」
老いるとは?」
「生命における不完全とは何か?」
「生命はどこを目指しているのか?」
という疑問をハギリが突き詰めていきます。
ダーウィンの進化論を思い出させるくだりもありました。

青白く凍てつく氷と海の世界が幻想的で、謎解きにまたもドキドキさせられる物語です。
ハギリ博士とAIたちのやりとりに人間らしい温かさがあり、感情があることの尊さを感じてなんだか涙が出そうになりました。

私にとってはこの作品がシリーズ内ベスト1です♥



⑦ペガサスの解は虚栄か?

今度はクローン技術の話が出てきます。
子供が生まれないはずの資産家に、子供が生まれるという不思議なことが起こりました。

実はその生殖には、秘められた悲しいカラクリがあったのでした。
それをハギリが暴いていきます。

親が子供を思う気持ちや肉親関係の捉え方を、今回はとても考えさせられました。

本書では後半にセンセーショナルな恐ろしい事件が起こるのですが、それさえも「生身の人間ならではの癇癪」として描かれています。
忌むべき出来事も違法行為も、AIやウォーカロンやロボットとの相対関係の中では、人間らしい過ちだと寛大に受け取ってしまう自分がいて、それがとても不思議でした。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


作品のおもしろさのディテールを、なかなか伝えきれずに残念でなりません。
また、時間をかけて読んでいるので、所々記憶があやふやで間違えているところがあるかもしれません💦

一般的なレビューも全て満点近いです。
とにかく世の中のことを考えながら真剣に生きている全ての現代人に、このシリーズは読んでみることをオススメしたいです。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

未読ですが、このあと当シリーズは下の二冊に続いていきます。

⑨『血か、死か、無か?』

⑩『天空の矢はどこへ?』
最新刊


しかし、⑨を読む前にこの↓2冊を読んだほうがより楽しめるそうなので、こちらを読んでからにしようと思います。

すべてがFになる (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)

森博嗣先生の本は、だいぶ以前に出た別のシリーズの作品が、思わぬ伏線になっていたりつながっていたりするようで、その深淵さにファンは興奮しまくりの様子。
私もそんな森作品の真髄をたのしんでみたいと思います。


ちなみに予約していたこちらの本も届いたばかりなので、並行して読んでいます♥

久々に読書で徹夜しかけた…森博嗣Wシリーズ『彼女は一人で歩くのか?』他

前回記事に書いた森博嗣先生のWシリーズ、今月に入って読み出したらドはまりしてしまいました。

お、お、おもしろすぎる・・・(;´Д`)
止まらない・・・(;´Д`)

これだから森博嗣先生の小説に手を出すの、怖かったんですよね(笑)

今出ている8冊(?)のうちの4冊を読み終わったところですが、続きが気になって気になって止まらなくて、何度も徹夜しかけました(^^;

「あと1章だけ…あと1章だけ…」の繰り返し(^^;

途中で終わったら、夢に出てくるほどです。

(↑今ここ)

(↑明日この2冊を引き取ってきます)



残り4冊‼‼
うおおおおぉぉぉおぉぉおー‼‼



(感想はコンプリートしてから書きます、、、たぶん。)

5月の読書と簡単な感想 9冊

①エベン・アレグザンダー『プルーフ・オブ・ヘブン』

よくある「死後の世界に行って戻ってきた」人の体験記ですが、彼は非科学的なことに否定的な立場だったお医者さんです。
そんな医師が死後の世界を経験したことで、霊的な話の信憑性を上げたいということなのでしょう。

彼は「自分の体験したことを世の人に伝える義務がある」との思いから、本書を執筆したそうです。

"あの世"の描写は興味深く読めました。
ただ、私には見聞したことのただの記録のようにしか思えず、彼がこの体験を通して人々に何を伝えたかったのか大切な部分が見えませんでした。

それよりピントがズレますが、大切な人が昏睡状態になったときのまわりの辛さの描写のほうが私には生々しく伝わってきたように思います。

惰性で読みきりました。



森博嗣ツンドラモンスーン』

森先生のエッセイです。
このシリーズはまだ読んでいなかったのですが、やはりおもしろい。

それにしても森先生って本当に天才だと思います。

旧帝大(しかも大学院の博士課程)を出て工学博士。

これだけでも非凡なのに、

・急に思い付いて書いてみた小説でいきなりベストセラー。
・著書はすべて人気でTVドラマ化も何本かあり。
・小説はシリーズの一作目を書いた時点で次回作と次々回作までタイトルと内容が出来上がっている。

・エッセイかなんかで未来について言及した予言が実際に当たったりする。

・執筆の傍ら旧帝大客員教授(だったかな?)。

・趣味の鉄道作りは遊びのレベルを越えて発明級。

とにかくこの方の著作数はとんでもなく多くて、実際に作品は面白いです。



林真理子『不倫のオーラ』(新刊)

不倫のオーラ

不倫のオーラ

これもエッセイです。
林真理子さんの作品は一時期けっこう読んでいましたが、たまたま新刊を見つけたので久々に読んでみました。

元々この方は劣等感コンプレックスと自尊心の塊で、女の嫌らしさを描き出す作家で定評がありますが、歳を重ねるごとに更に年々オバサンの嫌らしさが増していっている気がします。

歯にもの着せぬ持論がますます遠慮なくなったというか。
自分の裕福さをひけらかす態度に恥じらいもなくなったというか。

それでも人道的に正しいことをズバッと言っていたりするので、イラッとさせつつスカッとさせるところが流石だなぁと読み流しました。

ある雑誌のコラムのダイジェストのようで、時事ネタが多いのもよかったと思います。
2017年のネタの文庫書き下ろしなので、今読むのが旬ですね。



ハーラン・エリスンヒトラーの描いた薔薇』

文体がかっこいいのは訳者のお手柄なのでしょうか。
エリスンはSF界の巨匠らしいですが、こちらの短編集はSFとホラーが混ざったような印象の作品群でした。
一言でいうならどの作品もシュールです。

残酷な描写が淡々と描かれている作品もあり、グロが苦手な私には、好きな作品と苦手な作品がかなり分かれました。
ですがこういうシュールでブラックなものが好きな読者からは評価がかなり高いようです。

誰でも心がムシャクシャして悪態をついたり、人を傷つけてみたりしたくなるときってありますよね。
けれど日常でそれを吐き出すことはなかなか許されません。

そんな人間のドロドロした汚い部分を、代わりにぶちまけてくれてスッキリさせてくれる役目も世の中には必要です。
本書はまさにそんな存在ではないかと思いました。

読んでいるだけでダークな気持ちになり、結果的にそれをカタルシスにまで昇華させてくれる作品かもしれません。



⑤栗山恭直『世界でいちばん素敵な元素の教室』(準新刊)

前々回ブログ記事に書きました。



⑥江川多喜男『10分で分かる!かがくのぎもん1年生』

10分でわかる!  かがくのぎもん 1年生 (なぜだろうなぜかしら)

10分でわかる! かがくのぎもん 1年生 (なぜだろうなぜかしら)

前回ブログ記事に書きました。


⑦ニスベット『木を見る西洋人 森を見る東洋人』

木を見る西洋人 森を見る東洋人思考の違いはいかにして生まれるか

木を見る西洋人 森を見る東洋人思考の違いはいかにして生まれるか

真面目な学術書で、人は文化の違いで認知にも相違がでるという話です。

読みかけて面白かったのですが、残念ながらなんか今回この本とはタイミングが合わず途中で読むのをやめてしまいました。

読もうとすると何かしら邪魔が入るんですよね。
それで、「あ、今は読むべき時じゃないのかな」と。

そんなとき下↓の『右?左?のふしぎ』に出会ってしまい、こちらもなかなか面白くて先に読むことにしました。



⑧ヘンリー・ブランナー『右?左?のふしぎ』

右?左?のふしぎ

右?左?のふしぎ

現在読んでいてもう少しで読み終わるところです。


森博嗣『彼女は一人で歩くのか?』

ツンドラモンスーン』を読んでいたら、森先生のWシリーズを読んでみたくなりまして。
シリーズ一作目のこちらを図書館でゲットしてきました✌

面白かったら来月はこのシリーズに挑戦してみようかと。