とりあえず思いつく本を挙げておきます

母になっても読書は日課。本の記録と紹介のブログです。(3ヶ月以内に出版されたものを「新刊」、概ね半年以内に出版されたものを「準新刊」としています)

食育以前に読んでおきたい「食」の本②~森達也『いのちの食べ方』

私たちの暮らしは、多くの命の犠牲のうえに成り立っています。
『いのちの食べ方』は、食卓に上る肉がどのような過程を経て私たちの手元に届くのか…という食育の題材を皮切りに、「いのちを頂く」ということや「いのちの尊さ・憐れみ」といった深いテーマについて、真剣に考察するノンフィクションです。

いのちの食べかた (よりみちパン!セ)

いのちの食べかた (よりみちパン!セ)

前半は主に屠殺も含めた食育に直結する話で、私も関心があるつもりだったけれど、多くのことを見逃したり目を伏せたりしていたと反省させられました。
たとえば、楽しくて大好きな動物園が、私たちの暮らしにどれだけ残酷なつながりがあったか。
なぜウサギは動物なのに「1匹、2匹」ではなく「1羽、2羽」と呼ばれるのか。
同和問題が今もなお根が深いのは何故なのか、等々、、、。

人間は自分達の利益のために、世界のあらゆるものを搾取するという本性を目の当たりにした気がします。
悲しい現実を知って目からウロコが落ちましたが、知らないままではもっと恐ろしいと思いました。


中盤以降はメディアリテラシー、社会の仕組み、差別、戦争と平和、人の心、歴史、政治、宗教哲学、人類…といった、様々な問題について話が広がっていきます。
内容は多岐にわたっていますが、「他者のいのちをいただく」というテーマは根底で一貫しています。
一冊丸ごとに高い道徳性を感じました。


本書はジュブナイルなのでティーンが読んでも分かりやすくまとまっていますが、もちろん大人が読むにも申し分ない内容です。
ここに書かれていることを母親が知っているかどうかで、子育てに及ぼす影響も大きいのではないかと思いました。

かなり深く研究しただろうなと思うような重要なデータも、非常にわかりやすい平易な文章でまとめてあり、要点が自然な流れで示してあります。


自分という存在、生きるということ、そして社会の中で自分に何ができるか。
食卓に並ぶ肉を見つめながら、人類にとって根本的な問題をじっくりと考えさせられる一冊です。


いのちの食べかた [DVD]

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本書を原作に、映画もつくられたようですね。
森達也さんのその後の著書も出ていますが、こちらは未読です。



booksformams.hatenablog.com
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