村山由佳『ダンス・ウィズ・ドラゴン』
私は目に見えない因果に興味があります。
オカルト的な意味ではなく、宇宙の中で解明されていない多次元や時空が、ひょっとしたらそれらは「神」「霊」「前世」「縁」などに関係しているのではないかと思うのです。
そんなわけで、宗教とか心霊の分野で扱われる事象は もっと科学が進めば解明されるだろうというロマンから、輪廻転生を扱った小説が結構好きです。
『ダンス・ウィズ・ドラゴン』はそんな私の好みに合った物語でした。
東京吉祥寺の井の頭公園にある 夜だけ開く不思議な図書館をきっかけに、男女4人(主な登場人物)が出会います。
一人は龍の霊夢を見て、一人は龍にまつわる前世の記憶をもち、また別の二人は兄妹で龍を祀る司祭の家で育つが生き別れになり、再開を果たすのです。
彼ら全員が、生い立ちから現在に至るまで様々な「龍」にまつわる経験を持っていることが分かり、その因縁や真実が明らかになっていきます。
- 作者: 村山由佳
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2012/05/25
- メディア: 単行本
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龍は誰も見たことがないはずなのに、昔から西洋でも東洋でも長きに渡り、共通した特徴をもつ姿が描かれ語り継がれてきたのは不思議なことだとは思いませんか。
そんな龍が、本書の中では徐々に「目に見えないものこそ 信じるべきもの」として捉えられていき、また登場人物の輪廻転生と絡めながら「龍(の体)」を「川」や「時間」とかけて描かれていきます。
あらゆる時空と魂がからまった物語なのだということにラストで気付き、不可思議だった時間や場所や関係の全てに合点がいきました。
恋愛小説ではありますが、やはりこの物語の主題を一言で表すと「輪廻」なのだと思います。
ざっくり輪廻と書きましたが、もちろんエピソードひとつひとつが面白くのめり込めました。
毎日かたちを変え続ける不思議な図書館。
登場人物の抱える過去の不幸な生い立ち。
龍と人間の不可思議な関わり。等々、、、
ただ、図書館長の存在や、離婚した登場人物の元夫や妹とのエピソードなど、何かの伏線かと思っていたものが結局何でもなかったのが非常に残念でした。
着想や設定が面白かっただけに、もっと脇役や過去の話を生かしてほしかったと思います。
それはともかく、著者村山さんはおそらく、龍に関して沢山調べたり取材したりを重ねた上で、ご自身にとっての「龍」を文学で描かれたのでしょう。
ますます人と切ることのできない龍の不思議さが胸に迫りました。
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こちらは村山由佳さんの作品の中でも特に私が好きな2冊です。↓
- 作者: 村山由佳
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1998/06/19
- メディア: 文庫
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- 作者: 村山由佳,池上冬樹
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2002/06/20
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