本多孝好『チェーン・ポイズン』
たて続けに自殺したOL、バイオリニスト、殺人被害者遺族の3人には、互いに面識はありませんでしたが、意外な共通点がありました。
共通点とは、''自殺時期''と''アルカロイド服毒死''という点です。
その不審な自殺に気付いた週刊誌記者が、3人の自殺に隠された真相を追うことになります。
伏線の回収と謎解き、そして最後のどんでん返しにハッとさせられるミステリー(?)でした。
- 作者: 本多孝好
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/01/17
- メディア: 文庫
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ここに登場するOLは自らの人生に失望していた矢先、ある人物に出会い、こう言われます。
本当に死ぬ気なら、一年待ちませんか?
一年間我慢すれば、私が楽に死ねる手段を差し上げます。
この出会いときっかけに、死に向かうOLの人生最期の1年が始まるのです。
そして1年間を彼女なりに生き、様々な出会いがあり、紆余曲折を経た後で改めて死ぬことを決意し、、、
物語は結末を迎えます。
現実世界では、よく自殺願望のある人に対して「死ぬ勇気があるなら何でもできる」とか「あと一日だけ、あと一日だけ…と何とかその日を生きてみろ」
などの言葉を見掛けます。
(私はこれらの言葉は無意味なものだと思っていますが)
このフィクションでは、これらの言葉を「どうせ死ぬならあと1年だけ生きてみよ」に置き換え自殺希望者が受け入れた場合どうなるか?の思考実験のように感じました。
さてその実験結果ですが、ネタバレしない程度に書くと、
ケースA=1年後に結局自殺を選ぶ
ケースB=1年後に生きる希望を見つける
の2つの結果が得られました。
ではこのAとBの違いは何なのかというと、
A=他人の不幸を思って1年を過ごした
B=他人に必要とされる経験をして1年を過ごした
ということだったのが物語の最後に分かります。
私は最後にこのAとBの対比に気付いたのですが、''人は他人の幸せを願ったり他人に必要とされたりする中で、生きる希望を感じるのだ''とか''人は独りでは生きられない''という隠れたメッセージを感じました。
言葉で書くと当たり前のことですが、しかし物語の中で登場人物と同じように人々の情に触れながら生と死と向き合っていくと、「では自分の生きる原動力となっているものは何なのだろう」と私自身が考えさせられるわけです。
結局は誰にも必要とされなければ、生き甲斐は感じ難いと気付きました。
最後に、記者とOLの2つの視点のストーリーが交互に語られていますが、二者の関係も注目すべきポイントです。
読者を惑わす叙述トリックになっていて、あっぱれです。
生きている人が死んだ人の想いや足跡を辿る作品として、『悼む人』を思い出しました。
- 作者: 天童荒太
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
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