とりあえず思いつく本を挙げておきます

母になっても読書は日課。本の記録と紹介のブログです。(3ヶ月以内に出版されたものを「新刊」、概ね半年以内に出版されたものを「準新刊」としています)

我武者羅應援團『ぼくらの仕事は応援団。』

日本でおそらく唯一の職業応援団、「我武者羅慶援團」の自叙伝です。
応援団とはまさに、学ランを着たコワオモテのお兄さんたちが、運動会や試合で声を枯らして全力で声援を送るアレです。
この団体は、応援してほしい・応援してあげたい方からの依頼を受けて、全国各地…いや海外にまで応援に駆けつけます。

私は、以前に記事にした 河野通和『考える人は本を読む』で興味をもち読んでみました。
はじめ仕事としての応援団と聞いてもピンときませんでしたが、読みはじめるとすぐに彼らの人間性の熱さに引き込まれました。


僕らの仕事は応援団。 ~心をゆさぶられた8つの物語~

僕らの仕事は応援団。 ~心をゆさぶられた8つの物語~

本書には、我武者羅應援團(以下ガムシャラ応援団)が実際に経験した、実話に基づく応援エピソードが8話綴られています。

結論からいうと、全て何らかの意味で心が熱くなる感動エピソードばかりでした。



エール1
金髪お父さんから、すれ違い疎遠になった息子へ。
結婚式で涙のエールをおくります。

エール2
企業で頑張るサラリーマンたちのエール。
実直に働く姿が描かれます。

エール3
異文化に応援団を持ち込んだらどうなったか?
フランスでの大きなイベントでの「押忍!」「ホス」!

エール4
母子家庭の姉妹から、母の日のプレゼントエール。
姉妹からのエールは「嗚咽」でした。

エール5
24時間マラソンで選手とともに体を張ったエール。
素晴らしき「バカ」達と出会いました。

エール6
看護学校で学生への応援。
不安を共に分かち合った涙の授業でした。

エール7
3.11後の気仙沼にて被災者へのエール。
シビアな現実の中、果たして応援団は受け入れらたのでしょうか。

エール8
逃げ出した過去との対面応援ステージ。
自分の後悔を乗り越えることができたのでしょうか。


私が特に好きだったエピソードは、母子家庭の姉妹からのプレゼントエールと、看護学校の授業でのエールでした。
依頼者の状況自体がジーンときますが、ここに対峙するガムシャラ応援団員たちの、誠意や哲学が胸に響くのです。

日本人は比較的、言葉にできないほどの強い気持ちは言葉にしないことで表現すると私は感じています。
本気になればなるほど言葉にできない、そんな母への感謝や愛情が、嗚咽してしまった姉妹の描写から痛いほどに伝わってきました。

また看護学生に向けた授業では、副団長が自らの弱味をさらけ出しながら「真剣だから不安なんだ」「不安でいいんだ」と、学生たちの苦しさを肯定してあげます。
なんだか私まで寛大に包み込まれたような、大きな勇気をもらえました。



ガムシャラ応援団員は、応援依頼を受けると、まずは相手にヒアリングをして状況把握や感情共有をするのだそうです。
そんな姿から、彼らの誠実さが伝わってきます。
そして本気で生きるとか、命を燃やすとはどういうことか、を教えてもらえた気がします。

私もかつて20代ころは熱い思いを抱いて生きていましたが、いつしか人生や社会にどこか諦めや冷めた思いを抱くようになっていたことに気付かされました。

中には熱血漢が苦手だというクールな性格の方もいるでしょう。
あえてそんな方にもぜ読んでいただき、感想を聞いてみたいです。
暑苦しくて苦手ならそれでいいと思いますが、少しだけ、いい歳してこんな熱い男達がいるのだという世界を垣間見るのも新たな発見になるかもしれません。