汐見稔幸『人生を豊かにする学び方』(新刊)
おそらく中高生向けに書かれた新書です。
何のために学ぶのか?どのように学ぶべきなのか?という話です。
もちろんここでいう「学び」とは、受験勉強など狭義の学習のことではありません。
私はなぜこの本を読んだのだろう?
予約した記憶がないのですが、図書館の予約本に入っていて、気付いたら借りていました。
せっかく何かのご縁だと思い、読んでみました。
(たまにある。)
これからの時代の学び方として、"キー・コンピテンシー"や"ATC21s"や"国際バカロレア"などの話も出ています。
だいぶ前から一般的にも話題に上がるようになった言葉ですが、教育に関心のある方や、グーローバル人材のあり方を真面目に考えているような方には、改めて分かりやすくまとめてあるので参考になるのではないでしょうか。
- 作者: 汐見稔幸
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2017/10/05
- メディア: 新書
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さて、著者は学ぶことの動機を「自由になるために学ぶ」と言っています。
自由とは、生きていくうえで選択肢が増えることだそうです。
学ぶ目的に関しては、十人十色の答えがありそうで興味深いです。
確かに思春期なんかに「何のために勉強なんてするの?」と、私も思っていましたね。
何のために学ぶか、ではなくて、学ぶことが人生そのものだと今は思っています。
あらゆる生物が進化するなかで、唯一人類ヒトだけが進歩する生き物です。
人間の特性として、学ばずにいられない生物なのでしょう。
自分が日々何かを学んでいるかと問われると、苦しいですが(^^;
さて、本書を読んで特に目新しい情報は特になかったのですが、著者の90代のお母様が現在もなお日々学び続けていらっしゃるという話がありました。
本当にご立派です…。
これをきっかけに、自分のことで思い出したエピソードがあります。
私は夫の全国転勤のため定職を退いたのち、一時期関西に住んでいましたが、当時ある施設でちょっと特殊な(?)講師をしていました。
そこで受けもっていたひとつの講座の受講生に、不治の病を患う高齢(80代)の女性がいました。
ある日の講座終了後、帰り際にその女性が私の元にいらして、こう言われました。
「先生、今日もありがとうございました。次回もまた、命があったら参ります。」
、、、衝撃でしたね。
明日命があるか分からない。
次があるか分からない。
けれど命果てるそのときまで、何かを学び続けようという姿、、、。
学んだことを何かに生かそうとか、そんな動機はないわけです。
その方にはとっては、学ぶことそれ自体が目的だったのでしょう。
この姿勢から、人類ヒトの本質として学習欲があることを直感的に悟りました。
そして、若輩で未熟ながら教鞭を執る職にある自分の立場のおこがましさや、日々是精進という謙虚な気持ちを思い出させていただきました。
ちなみに、その80歳のおばあちゃんとはそれ以来お会いすることはありませんでした。
最後のさいごに、生涯を通して宝物になるような尊いことを、私に教えてくださったのです。
私も生きている限り、常に何かを学び続けていきたい。
あれから数年が経過した今、、、
本書を読んで、あのときの涙が出るほどの衝撃がよみがえり、改めて心に刻みました。