とりあえず思いつく本を挙げておきます

母になっても読書は日課。本の記録と紹介のブログです。(3ヶ月以内に出版されたものを「新刊」、概ね半年以内に出版されたものを「準新刊」としています)

鳥と恐竜と人間と~『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』

■考古学や恐竜の何がおもしろいのか

シュメール人とか、昆虫宇宙飛来説とか、月の成り立ちとか…
そんな古来の謎めいた話が出ると、ドキドキして血圧が上がってしまいます。
私は古代文明や生命進化など、この世界の「起源」にまつわる話がたまらなく好きなのです。

世界は謎と神秘に包まれていて、人知では考えも及ばないヒミツに触れるスリルがたのしいからです。

そして恐竜の研究という分野も、そんな「現代人が知ることのできない太古の謎を解いていく」というロマンがあるそうです。
次々に発見される化石という物的証拠から、二度と見ることは叶わない在りし日の恐竜の姿を解明することができるのです。

鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー)

鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー)

私は今回、そんな恐竜研究のもつ深遠なるロマンと面白さを『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』を読んで知ってしまいました。


■鳥を見ると恐竜のことが分かる?!

恐竜はすでに6500万年前に絶滅したと言われていますが、実は現存する鳥類は恐竜の中の一種だということが最新の研究ではわかっているそうです。

そこで鳥類学者である著者は、鳥類の特性から恐竜の姿や生態を解明できるのではないか?という発想で、恐竜をあれこれ想像(推論)していくわけです。

化石からだけでは読み取れない恐竜の生態にズンズンと踏み込んでいきます。

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www.dailymail.co.uk 2017年に発表された最新のt-rexの姿

私は子供の頃、「恐竜なんて骨しか残っていないんだから、どんな皮膚だったかわからないじゃん。もしかしたら毛が生えていたかもしれないよ?」と父に話したところ、一笑されて終わりました。

しかし!
現在では鳥のように羽毛のある恐竜なんかも見つかっていて、当時の私の考えはあながち間違いではなかったそうなのです。

そんな私にとっては恐竜の体表、特に色の話が面白かったのですが、

作者は例えば、白黒の色をした現存鳥類の特性から、海の上を飛ぶ恐竜(翼竜)は同じように白黒だったのではないかと論理的に推測しています。

他にも胎内で卵をあたためてかえす「卵胎」という鳥類の特性から、
「恐竜化石の体内から子供が出てくると捕食されたと考えられているが、いや待て、恐竜も卵胎で子供を産んでいたのかもしれないぞ」などなど…。

恐竜の食事に味覚や求愛、鳴き声や生活サイクル、巣の様子、、、他にも色々。
多岐にわたって新しい視点と発想から、ユニークな恐竜の姿を惜しみなく披露してくれました。


■地球の歴史に挑む人類

小型翼竜では、不器用に着陸した末に肉食動物に食べられて、翌日にはウンコだ。

私のツボは少し人とズレているのでしょうか。
一般的な読者が笑うユーモラスポイントよりも、こんな小ネタが一番好きでしたw

とにかくも「本書は面白い」と評判で、図書館でも数ヶ月の予約待ちでしたが、何がそんなに面白いのでしょう?
それは「ユーモラスな面白さ」と「未知の学問に触れるおもしろさ」の2つがあると私は思いました。

でも「笑える」という面白さよりも、やはりこの本は「知ることのできないことを人間の知恵で解明を試みる」という知的好奇心を刺激される面白さが一番大きいと思います。

地球誕生から46億年。
恐竜が生きていた期間は約2億年。
ホモ・サピエンス出現から20万年。※
私が本書を読んだ日数3日間。
(※諸説あり)

こんなに長い地球の歴史の中で、つい最近出てきたばかりの私達が、気の遠くなるような大昔のことを解明する知恵をもち、しかもこんな莫大な時間と思考の一部が一冊の本に綴じられている…と考えると、凄すぎて息が詰まるほどです。

ダーウィン
"強い種が残るのではなく、たまたま環境に適したものが残れる"というような「適者生存」を提唱していたと思うのですが、

あの強く栄華を極めた恐竜が絶滅し、現在ヒトが栄えている…という奇跡に、なんだか気が遠くなってしまいました。

種の起源〈下〉 (光文社古典新訳文庫)

種の起源〈下〉 (光文社古典新訳文庫)