とりあえず思いつく本を挙げておきます

母になっても読書は日課。本の記録と紹介のブログです。(3ヶ月以内に出版されたものを「新刊」、概ね半年以内に出版されたものを「準新刊」としています)

波頭亮『AIとBIで人間はいかに変わるのか』

波頭亮『AIとBIで人間はいかに変わるのか』を読みました。

AIは人工知能のことで、自ら学んでどんどん賢くなっていくという特性があり、あらゆる点で人間の能力を越えるのではないかと言われています。
BIとは「ベーシックインカム」のことで、労働の有無に関わらず、生きるために国民すべてが無条件に受け取ることのできる最低限の収入のことです。


本書の内容をザックリまとめてみます。


【1章 AIについて】
AIのこれまでの歴史について触れながら、今後どのように進化していく可能性があるか紹介されています。
またAIの強みと弱点を挙げながら、AIをどう活用していくべきかについても考察しています。

AIが苦手なのは、身体ベースのマルチタスク、直感/直観型の作業、クリエイティブ要素のある制作など。
ということで、情緒や身体性が必要な仕事はやはり生身の人間の得意分野として譲れないものとなりそうです。


【2章 BIについて】
BIの仕組みとメリットが紹介されています。
AIに仕事を取られてしまっても社会の誰もが食べていけるように、BIはこれからの社会に必要なものなのだそうです。

BIの長所は
①全員が無条件で受け取れるシンプルさ
②運用コストが少ない
③恣意性が入らない
④働くインセンティブが失われない(働いたらBIとは別に報酬を得られる)
⑤個人の尊厳を傷つけない
という点です。

BIは「働かない人(フリーライダー)を増やすのではないか?」とか「財源を確保できるのか?」との観点から、導入に抵抗があるのが一般的な世論のようですが、これについては解決案が明記されていました。

これほど良いことづくめのBIがなぜ実現しづらいのか、その理由も問題点として具体的に述べられています。
他にも民主主義・資本主義の特性を踏まえた上で、日本のみならず先進諸国の例なども取り上げられています。


【3章 AI+BIと人類】
AIとBIが台頭した社会で、人間の暮らしがどう変わり、どう生きていくべきかを考察しています。
仕事の多くがAIにとられ、BIで食べていけるようになったら、当然働くことの意味が変わります。
そんな中で私たちは、人間らしく心身ともに豊かに生きられるための能力、、、つまり人生で打ち込めることを一人ひとりが見つけなくてはならないということです。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

AIは概ね知っていることばかりだったから良いとして、BIについては基礎的なことを本書で初めて詳しく知ることができました。

生活保護の不正受給者の問題などを聞くたびに、「働かざる者食うべからず!」と憤りを感じていた私です。
BIについても「働かなくても全員がお金をもらえるなんて!」と抵抗がありました。

けれど生活保護などとは当然ながら根本的に違うのですね。
つまりこの世に生まれてきた時点で、貧富の差は関係なく、誰もが食べて行けることを保障されている状態がBIという制度なのです。
これは人類史上で貨幣経済が生まれて以来の、経済の在り方そのものの大きな大きな転換とも感じました。

ただ、ひとつ言えるのは、人口増加や経済格差、環境破壊や戦争などあらゆる点で行き詰まった現代社会では、社会システムのどこかを根本的に変えなくてはならないということです。
BIの試験的導入で成功していることや、経済学各派が揃ってBIを推していることなどから、ここはBIを試してみる価値があると思うのです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

AIが仕事をある程度してくれて、自分が食べることに困らなくなったら、これはある意味「人類の存在する意味」や「人類はどこへ向かうのか」ということをこれまで以上に問われることになるかもしれません。

筆者も本書で述べていますが、人間は働かずに食べて行けるようになったら、怠惰になるよりもむしろより有意義な活動や生き方を求めるようになるのだそうです。

AIとBIが活用される世の中がユートピアになるのかディストピアになるのかは、まさにこれから現代人が正しい認識をもって何を選択していくか、分岐点に差し掛かっているのだなと危機感を抱くことができました。
当然ながらAIもBIもメリットが大きいぶん、使い方を誤ると人類の存続さえ脅かしかねない…諸刃の剣となるでしょう。