桜の話と、重松清『さくら地蔵』の話
私の住む地域では、昨日から桜が満開を迎えています。
子供たちの入学式と入園式が開花に間に合わなかったので、今日、ランドセルと制服で、校門の前で写真を前撮りしてきました。
桜って温かくて切なくて、とても美しい、不思議な花だと思います。
今日は桜にちなんだウンチク話と、素敵な短編小説をご紹介させてください。
■桜は自分で開花日を計算している話
毎年3月に入ると桜の開花予想日が発表されますが、どうして分かるのか不思議に思ったことがあります。
実は桜は"ある日"から数え始めて、毎日の平均気温が合計400℃になると、花を咲かせるそうです。
ではその平均気温を数え始める"ある日"とはいつなのか?
、、、それはなんと、2月4日の立春なのだそうです。
桜は2月4日の立春から、毎日の平均気温を足し算しながら蕾を温めるのだそうです。
※諸説あり、2月1日から数え始めるという立場もあるが、細かい計算を考慮すると2月4日あたりになるのが有力だそう。
■寒い冬の桜の底力の話
昔々あるところに、どんな布もあらゆる植物から美しい色に染めあげることのできる染め師がおりました。
しかし染め師は、桜色の染め物だけは、生まれてこのかた一度も成功できずにいました。
くる年もくる年も桜の花びらを集めては煮て、布を染めようと何度も試みますが、桜色にはなりません。
ある年ついに疲れ果て、自信を失いかけた染め師は、苦しみの末に奥方に相談しました。
「この布を桜のように美しい色に染めあげるには、どうしたら良いものか。」
奥方は答えました。
「あなたは今、苦んで悩んでいる。苦しみ耐え忍んでいる時こそ、生き物は、最も強い力を内々に蓄えている時なのです。」
この答えを聞いた染め師は、ふと閃きました。
桜が最も苦しみ耐えているのは、極寒の冬ではないだろうかーーー。
そして次の冬のこと。
染め師は寒い寒いある朝、雪をかぶる桜の枝を切り集めました。
その枝を使って布を煮てみるとーーー。
ついに布は、それはそれは美しい桜色に染まったのでした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これは事実がもとになった話だそうですが、私の弟が大学受験の一番辛い冬期(もう10年以上前)に予備校講師から聞いてきたそうです。
これから美しく満開の花を咲かせるため、今は耐え忍びながら、力をたくさん蓄えている時期なのだ、と。
※桜染めには枝以外に落ち葉を使う技法もあります。
■重松清『さくら地蔵』の話
私が毎年春になると読んでいる『季節風 春』という短編集に、『さくら地蔵』は収録されています。
初めて読んだとき、「桜」というものを、こんなに切なく温かい切り口で語られる着想に打ちのめされました。
桜という存在が、単なる"観賞用の花"とは全く別の角度から描かれているのです。
小学校に入学する新一年生が出てくるので、我が子が入学を控えた今年は特に感慨深く、胸が熱く締め付けられるようで、もうボロ泣きでした。
- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
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日本のどこでも見られる風景ですが、この物語中の道端にも古びたお地蔵さまがたっています。
しかしこのお地蔵さまは他とは少し違います。
毎年2月から5月の半ばまで、薄いピンク色の桜の花びらで飾られるのでした。
不思議なことに、お地蔵さまのまわりにはたった一本の桜の木さえ植わっていないどころか、まだ開花時期でもありません。
一体この花びらたちはどこから来たのでしょうーーー。
実はこのお地蔵さまと桜の関係は、ある人物のとても大切な思いから生まれたのでした。
そして新しく出会った、お地蔵さまと女の子の仲の結び方も素晴らしいです。
人が人を大切にする心、親が子を思う心、季節を大切にする日本人の魂、美しいものを愛でる人の感性、受け継がれていく命の尊さ。
短い物語のなかに、そういったものがギュッと詰まっています。
何かに感動したい方、桜を花見以外に味わいたい方、本を読みたいけれど何を読もうか迷っている方に、手軽に読めるので心からオススメします。
もちろん他の収録作品も「春」にちなんだ素敵な短編ばかりです。
■最近の私の桜ネタ話
去年出会って惚れた桜八ツ橋。
それから先日紅茶を買いにいった英國屋さんで、とても素敵なジャムを見つけたので試しにひとついただいてきました。
すでにかなり減ってしまった(^^;
うん、桜の香りと味がする。
桜の花びらが入っています。
『桜地蔵』を読んだあとだと、花びら一枚一枚にもぬくもりを感じてしまいます。
桜地蔵にあやかり、これからも子供たち皆みんなが健康で安全に成長しますように。
今週のお題「お花見」