とりあえず思いつく本を挙げておきます

母になっても読書は日課。本の記録と紹介のブログです。(3ヶ月以内に出版されたものを「新刊」、概ね半年以内に出版されたものを「準新刊」としています)

堀貞一郎『感動が人を動かすー東京ディズニーランドの成功を支えた名脇役たち』

ディズニーランド(リゾート)の経営に関しては多くの本が出版されていますが、ディズニーランドができるまでについては、ここまで当事者によってありのまま書かれたものは他にないのではないかと思います。

オリエンタルランド取締役(当時)として東京ディズニーランドをプロデュースし、その成功をかげで支えた堀貞一郎氏が約20年も前に直々に残した記録です。

私に特別ディズニー贔屓というわけではありませんが、夢中になれる本でした。
何故こんなに良い本が絶版なのか?!
私はこれを読んで娯楽施設への見方がガラリと大きく変わってしまいました。

“感動”が人を動かす―東京ディズニーランドの成功を支えた名脇役たち (致知選書)

“感動”が人を動かす―東京ディズニーランドの成功を支えた名脇役たち (致知選書)


前半は主に、ディズニーランドを立ち上げるまでの話です。
いってしまえば初めからディズニーランドを作る計画があったのではなく、なにか長期的に生き残る高尚なテーマパークを作る計画に合わせて考えた結果、ディズニーが相応しいと判断され誘致に至ったらしいのです。
(他社によって富士山麓にディズニー誘致の可能性もあったと知って驚きました。)

ディズニーランドを作ることが決まってからの、世界トップレベルの経営者や有識者を動かす堀氏の技量が凄すぎてシビレます。

米国からディズニー側の人間が候補地の視察に来たとき、舞浜を推すためのプレゼンテーション方法などは大胆すぎてカッコよすぎて思わず唸ってしまいました。
舞浜もそもそもこのディズニー誘致の中で考案された地名で、「my浜」など色々な意味がこめられているそうです。

世界規模のとんでもない大偉業を、何食わぬ顔でやってのけるように見える堀氏の手腕の振り様はあまりにドラマチックでした。


後半はテーマパークに関する堀氏の分析や考察です。
30年近く前に出版された本なのに、女性の社会進出や環境問題、人口(高齢社会)問題など、まさに今起きていることが予見されており、さらにテーマパークの構想に利用する洞察力が見事です。

ディズニーがこれほど長期的に成功しているのは、できてからの運営の仕方よりむしろ、作る前の段階での構想のおかげだということが分かりました。
人を動かす手腕もさることながら、堀氏の先見の明や分析力も素晴らしいです。

本人は、予言でも霊感でもなくデータからの予測と言っているけれど、それらを具現化する力や交渉力こそが、この人の才能なのではないかと思います。


ディズニーの裏舞台が見られるだけでなく、時代の流れの読み方、組織のトップこそ美意識を磨く重要性、事業成功の秘訣などなど…内容はかなり濃密で得るものが多い著書なので、どちらかというとビジネス書の類いではないかと思います。
他と違って特に夢中にさせてくれたのは、本書は経営学にして、何より人と人との出会いのドラマが溢れていたことです。



今週のお題「読書の秋」