きたむらさとし『ミリーのすてきなぼうし』
きたむらさとしさんの絵本は、豊かな色使いと可愛らしいキャラクターが魅力です。
『ミリーのすてきなぼうし』には作家さんのそんな持ち味に加え、想像力を掻き立ててくれる楽しさがありました。
- 作者: きたむらさとし
- 出版社/メーカー: BL出版
- 発売日: 2009/06/01
- メディア: ハードカバー
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帽子屋を覗いたミリーは自分も素敵な帽子が欲しくなりますが、そんなお金はありません。
そこで透明な帽子を買うことにしました。
これはミリーが心に描く帽子…想像の帽子です。
街を歩くとミリーだけでなく、皆が素敵な想像の帽子をかぶっていて、、、というお話です。
私としては、ラストの場面でミリーを出迎えた親の対応の描写がなんだかとても好きでした。
子供の物欲に限らず、人生では望むことが叶わない、欲が満たされないジレンマに苛まれることは多々あります。
そんなとき、私たちは何かの方法で折り合いをつけなくてはなりません。
ミリーはこの物語のなかで、欲しいものが手に入らないときにこそ前向きに気持ちを切り替え楽しむ術のひとつを示してくれます。
「童話だから」、「子供の発想だから」、と片付けてしまうには勿体ない話です。
また"目に見えない服飾品"を扱った童話としては有名な『はだかの王様』がありますが、
こちらは「見えない」ことを嘲笑や揶揄の対象にしているのに対し、『ミリーの…』では夢のある描かれ方をしているというのも、対比してみると興味深いなと感じました。
まぁここまで深読みしないまでも、子供に読み聞かせた後で自分ならどんな帽子がほしいか考えさせると、お絵描きの題材や発想力を刺激する材料にもなります。