とりあえず思いつく本を挙げておきます

母になっても読書は日課。本の記録と紹介のブログです。(3ヶ月以内に出版されたものを「新刊」、概ね半年以内に出版されたものを「準新刊」としています)

『そういうふうにできている』

さくらももこさんご自身の妊娠体験について綴ったエッセイです。
私は長女妊娠中(6年ほど前)に、いち妊婦の体験記として読みました。

まずは妊娠・出産とは人類が始まってからずっと繰り返されてきた営みだけれども、個々の女性にとっては本当に一大事で、喜びや苦痛と隣り合わせの大偉業なんだと改めて思います。

妊娠・出産を通し、それまでの心身や生活から価値観や人生観に至るまで、多くの女性は変化を経験するのではないでしょうか。

そういうふうにできている (新潮文庫)

そういうふうにできている (新潮文庫)

本書は妊娠から出産を通しての出来事や考えた事などが書かれたエッセイですが、母になるプロセスの一例〜さくらももこの場合〜に触れ、女性の人生の深さを垣間見ました。

「そういうふうにできている」というタイトルは、簡単な言葉のようでとても深いです。

妊娠から出産まで色々なことがあったけれど−−−結局、人が生きることや命の営みって、私達が理屈で考えてどうにかなるものじゃない。
何か見えない力に生かされていて−−−自然界の規則は「そういうふうにできている」んだ。その通りに生かされているんだ。

・・・そんな大きな神秘的なサトリが、このタイトルには凝縮されている気がします。
妊娠や出産に限らず、妊産婦に限らず、この宇宙に生かされている人間があらゆることに「そういうふうにできているんだ」と素直になれたらどれだけ世の中は変わることか…とも思います。

もちろん明確に神秘的な表現や霊的な言葉で明言されているわけではないけれど、妊娠や出産を通し、人知を越えた生命の営みやそれを動かす大きな力についてのさくらももこさんの哲学が読み取れたのが私には興味深いことでした。

例えば「魂」「心」「思考」の定義や、「痛み」の一括払いと分割払いについてなどは、著者なりの考えですが、真理を言い得て妙ではないか…と感銘を受けます。