佐藤真澄『小惑星探査機「はやぶさ」宇宙の旅』
2003年に日本から打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」が、地球を発ってから2010年に帰還するまでの7年間を描いた記録です。
高学年以上向けでしょうが、宇宙に詳しくない大人が読んでも感動すること間違いなしです。
小惑星とは太陽系を周回している、惑星ほどの大きさになれなかった小天体で、数百メートル~数百キロ程度のものが大部分のようです。
「はやぶさ」は 地球から数億キロ離れた「イトカワ」という小惑星に到達し、イトカワ地表の組成サンプルを持ち帰るという人類未踏の大きなミッションを担っていました。
小惑星の成分は 太陽系が出来た頃の情報が分かる言わば'太陽系の化石'で、宇宙や地球についての研究に大変役立つのです。
- 作者: 佐藤真澄,渡辺勝巳
- 出版社/メーカー: 汐文社
- 発売日: 2010/10/01
- メディア: 単行本
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「はやぶさ」には、世界初と言われる高度な技術が多く使われていました。
例えば地球からの電波もすぐには届かないほど遠い太陽系のどこかで、人間の管制室からの指令ではなく、「はやぶさ」自身が判断し着陸など行動ができるというプログラムには脱帽しました。
他にも色々日本のテクノロジーのすごさを目の当たりにし、誇らしく思います。
また、長い長い「はやぶさ」の旅には、「もうだダメかもしれない」という危機が幾度も訪れます。
イトカワへの着地失敗、燃料漏れ、応答なしの行方不明、エンジン故障、、、
しかし「今度こそもうダメだろう」と何度思っても、ほんの僅な残りの望みに賭けて対策を講じる地球人の執念と「はやぶさ」の姿が描かれていました。
「最後まで諦めない」という言葉はよく聞くけれど、「はやぶさ」とプロジェクトメンバーの起死回生のエピソードは、最後まで諦めないというのはどういうことかを身をもって教えてくれます。
行方不明になりながらも「はやぶさ」自身が必死で体勢を建て直そうともがいていたという姿には、愛しさに胸が締め付けられます。
搭載していた4つのエンジンABCDが全て壊れ、地球帰還が無理かと思われた最大のピンチには、なんとAの部品とBの部品をばらして組み換えて使うというとんでもない方法に出たときには、読みながら武者震いしてしまいました。
そんな長旅の終盤では「はやぶさ」を応援する一般人も増えていくのです。
地球市民からの「はやぶさ」へのメッセージや、「はやぶさ」が最後にたった一枚写すことができたという地球の写真、「はやぶさ」が流れ星になったという写真には、涙がこらえきれませんでした。
地球帰還のシーンは、固唾を飲んで見守る当時の人々と読者までが心をひとつにハラハラドキドキしてしまう場面です。
小さな体でひたむきに、たった一人ぼっちで宇宙を飛んでいた「はやぶさ」くん。
読んでいるうちに文章でも脳内でも擬人化されていき、まるで人格をもつ大切な存在として愛着が沸いていきました。
こんなに広くて冷たい宇宙に、熱い希望を抱いて立ち向かおうとする人類の底力を思うと、胸が熱く焼け焦げそうになります。