とりあえず思いつく本を挙げておきます

母になっても読書は日課。本の記録と紹介のブログです。(3ヶ月以内に出版されたものを「新刊」、概ね半年以内に出版されたものを「準新刊」としています)

司書さんとお別れの話

■大好きな司書さん

私が週1ペースで通っている地元の図書館は、とてもアットホームで温かい雰囲気です。
なによりも職員が良い方ばかりで、図書館の温かさはやはり職員のお力が大きいのだなと思わされます。

そんな中でも教育普及担当の女性の司書さんで、私たち親子が特にお世話になった方がいました。
元々美しい方なのですが、物腰が柔らかくいつも笑顔で優しく声をかけてくださり、うちの子供たちもとてもなついていました。

子供向けのイベントはいつも担当されていたので、常連の私たち親子の名前と顔も覚えてくださっていて。
うちと同じく姉妹のお子さんがいらっしゃるそうで、子育てに関する話もできたし、「こんな本を探している」と相談すると次から次へと素敵な本を沢山教えてくださいました。


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■春は別れの季節

先日3月末の子供向けイベントでその司書さんにお会いした際、イベント終了後に悲しい笑顔で知らせを受けました。

「私、異動になったんです、、、。」

え。

図書館でお別れがあるというのは、全くの盲点でした、、、。

不意打ち過ぎて、すぐには実感が湧かず。
でも私たち親子にとって本当に大好きで大切な方だったから、何かを伝えなくては、と焦りつつ、月並みな言葉しか返せませんでした。


いつも温かく迎え入れ、見守ってくださってありがとうございました。
赤ちゃんの頃から可愛がっていただいた子供達は、読書好きに育っています。
読み聞かせや紹介を通して沢山の素敵な本と出会うことができました。

子供達を本好きにしてくださり、ありがとうございます。
図書館が楽しい場所だと教えてくださり、ありがとうございます。
これからもお元気でご活躍ください。



異動先の図書館も市内にあって、年に数回は行くことがあるのでまた会えるかなと思いつつ、もういつもの図書館でお会いできないというのが信じられません。
日が経つにつれて、あ、もう会えないのだな、という実感が今ジワジワと沸いてきています。
子供達も異動の意味を理解すると泣いていました。


考える力がグングン育つ「なぜ?なに?」ふしぎ遊び35

考える力がグングン育つ「なぜ?なに?」ふしぎ遊び35

最後に紹介してくださった本を、その司書さんがいなくなったカウンターで、今日、予約してきました。





桜の話と、重松清『さくら地蔵』の話

私の住む地域では、昨日から桜が満開を迎えています。
子供たちの入学式と入園式が開花に間に合わなかったので、今日、ランドセルと制服で、校門の前で写真を前撮りしてきました。

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桜って温かくて切なくて、とても美しい、不思議な花だと思います。

今日は桜にちなんだウンチク話と、素敵な短編小説をご紹介させてください。


■桜は自分で開花日を計算している話

毎年3月に入ると桜の開花予想日が発表されますが、どうして分かるのか不思議に思ったことがあります。

実は桜は"ある日"から数え始めて、毎日の平均気温が合計400℃になると、花を咲かせるそうです。

ではその平均気温を数え始める"ある日"とはいつなのか?

、、、それはなんと、2月4日の立春なのだそうです。

桜は2月4日の立春から、毎日の平均気温を足し算しながら蕾を温めるのだそうです。

※諸説あり、2月1日から数え始めるという立場もあるが、細かい計算を考慮すると2月4日あたりになるのが有力だそう。


■寒い冬の桜の底力の話

昔々あるところに、どんな布もあらゆる植物から美しい色に染めあげることのできる染め師がおりました。

しかし染め師は、桜色の染め物だけは、生まれてこのかた一度も成功できずにいました。
くる年もくる年も桜の花びらを集めては煮て、布を染めようと何度も試みますが、桜色にはなりません。

ある年ついに疲れ果て、自信を失いかけた染め師は、苦しみの末に奥方に相談しました。

「この布を桜のように美しい色に染めあげるには、どうしたら良いものか。」

奥方は答えました。

「あなたは今、苦んで悩んでいる。苦しみ耐え忍んでいる時こそ、生き物は、最も強い力を内々に蓄えている時なのです。」

この答えを聞いた染め師は、ふと閃きました。
桜が最も苦しみ耐えているのは、極寒の冬ではないだろうかーーー。

そして次の冬のこと。
染め師は寒い寒いある朝、雪をかぶる桜の枝を切り集めました。

その枝を使って布を煮てみるとーーー。

ついに布は、それはそれは美しい桜色に染まったのでした。


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http://leaves.main.jp/



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これは事実がもとになった話だそうですが、私の弟が大学受験の一番辛い冬期(もう10年以上前)に予備校講師から聞いてきたそうです。

これから美しく満開の花を咲かせるため、今は耐え忍びながら、力をたくさん蓄えている時期なのだ、と。

※桜染めには枝以外に落ち葉を使う技法もあります。


重松清『さくら地蔵』の話

私が毎年春になると読んでいる『季節風 春』という短編集に、『さくら地蔵』は収録されています。

初めて読んだとき、「桜」というものを、こんなに切なく温かい切り口で語られる着想に打ちのめされました。
桜という存在が、単なる"観賞用の花"とは全く別の角度から描かれているのです。

小学校に入学する新一年生が出てくるので、我が子が入学を控えた今年は特に感慨深く、胸が熱く締め付けられるようで、もうボロ泣きでした。

季節風 春 (文春文庫)

季節風 春 (文春文庫)

日本のどこでも見られる風景ですが、この物語中の道端にも古びたお地蔵さまがたっています。

しかしこのお地蔵さまは他とは少し違います。
毎年2月から5月の半ばまで、薄いピンク色の桜の花びらで飾られるのでした。

不思議なことに、お地蔵さまのまわりにはたった一本の桜の木さえ植わっていないどころか、まだ開花時期でもありません。
一体この花びらたちはどこから来たのでしょうーーー。

実はこのお地蔵さまと桜の関係は、ある人物のとても大切な思いから生まれたのでした。
そして新しく出会った、お地蔵さまと女の子の仲の結び方も素晴らしいです。

人が人を大切にする心、親が子を思う心、季節を大切にする日本人の魂、美しいものを愛でる人の感性、受け継がれていく命の尊さ。
短い物語のなかに、そういったものがギュッと詰まっています。

何かに感動したい方、桜を花見以外に味わいたい方、本を読みたいけれど何を読もうか迷っている方に、手軽に読めるので心からオススメします。
もちろん他の収録作品も「春」にちなんだ素敵な短編ばかりです。


■最近の私の桜ネタ話

去年出会って惚れた桜八ツ橋。

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それから先日紅茶を買いにいった英國屋さんで、とても素敵なジャムを見つけたので試しにひとついただいてきました。

すでにかなり減ってしまった(^^;

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うん、桜の香りと味がする。
桜の花びらが入っています。

『桜地蔵』を読んだあとだと、花びら一枚一枚にもぬくもりを感じてしまいます。

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桜地蔵にあやかり、これからも子供たち皆みんなが健康で安全に成長しますように。




今週のお題「お花見」

3月の読書11冊と簡単な感想(新刊・準新刊含む)

一冊ずつ書評を書く時間がどうしてもとれないので、今月読んだ(読んでいる)本をまとめて備忘録&ご紹介します。

次回は季節に合わせ、「桜」にちなんだとても素敵な物語があるので、ご紹介させてください。

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伊坂幸太郎『終末のフール』

終末のフール (集英社文庫)

終末のフール (集英社文庫)

8年後に小惑星の地球突撃により、地球が滅ぶことが明らかとなった。
世界中の人々が自棄を起こし、略奪や殺人、自殺などで混沌としていたが、しばらくして再び落ち着いてきた今ーーー。

仙台のとあるニュータウンにひっそりと生き残る人々の生活と生き方を描いた、全てがつながる短編集。

未来がなく「死ぬ」と分かっていても、わずかな幸せや希望を抱いて生きる人々が健気でした。
人間は追い詰められたときにその本性が現れると思うのですが、それだけではなく「人生で何に価値を見出だすか」も見えてくることが分かります。

そんな中でも、「明日死ぬと分かっていてもいつも通り生きるだけ。元々いつまで生きるつもりの生き方をしてたんだ?」というスタンスの無口なボクサーに胸を打たれました。
私も生きている限り出来ることを淡々とやり尽くす人生でありたいです。

そして実際人間(特に日本人)の大部分は、滅びる未来が分かっていたとしても、さいごまで回避する方法を諦めないで最善を尽くして生き切るのではないかと思います。

庶民の悲しい日常の中にも少しの希望を感じさせるような、重松清さんのような作風でした。



仲野広倫『世界の最新医学が証明した究極の疲れないカラダ』(準々新刊)

著者は日本人でありながら米国のカイロプラクター。
日本とは違い、アメリカでカイロプラクターは医師と同様に医療行為を行える公式のエキスパートだと知りました。
しかも医師より広くて深い専門分野があり、それを知ることができたのが本書の一番の収穫でした。

もともと本書の一つのねらいが「日本でもカイロプラクターを医師と同等に公式に認めてほしい」ということなのだろうなと見え透いていましたが、実際私も身体の不調が出る歳になったら診てもらいたいほど…。

まず「痛み」への治療が、対処療法(痛みを消すための投薬)ではなく、抜本的療法(原因となる身体の仕組みを正常に戻す)という姿勢に賛成できます。

ただ、本当に有効な新しい健康法や治療法があったとしても、それをサポートする公的な制度や資格がないと実行は難しいんだよなぁというのが歯がゆいところです。

その他については、私はエクササイズなどは紹介されていてもマメに続かないし(というか一度もやらないし笑)、結局は日々の積み重ねだとか、姿勢をただすことが大切だとか、大部分は他の健康本と大して違わない印象です。
「究極の疲れないカラダ」というタイトルとのギャップも感じました。


Mdn編集部『デザイン。知らないと困る現場の新100ルール』(準新刊)

デザイン。知らないと困る現場の新・100のルール

デザイン。知らないと困る現場の新・100のルール

デザインの実務を最近していないので読んでみましたが、新しいことは何も書いておらず当たり前の内容ばかりで復習にもなりませんでした…。

新卒でデザインの現場に出たばかりの方や、初めてデザインワークに取りかかる方に向けたハウツー本だと思います。


太田哲雄『アマゾンの料理人』(新刊)

アマゾンの料理人 世界一の“美味しい”を探して僕が行き着いた場所

アマゾンの料理人 世界一の“美味しい”を探して僕が行き着いた場所

ライトなエッセイなのですが、ここ2~3ヵ月に読んだなかで一番よかった本です。
とても面白かったし、著者の料理哲学がとても好きです。
こちらはまた改めて書評を書きたいです。


Newton 2018年1月号 『ゼロからわかる人工知能

Newton(ニュートン) 2018年 01 月号 [雑誌]

Newton(ニュートン) 2018年 01 月号 [雑誌]

AIネタに触れるたび、人類はどこへいことしているのだろう?と怖くなります。
こちらもまた改めて書評というか雑感を書きたいです。


スタニスワフ・レムソラリス

比較的ハードなほうのSFです。
これまで読んだSFの中でも上位にくる傑作だと思いました。

現在よりも科学が進歩した地球人が惑星ソラリスを発見したのですが、なんとソラリスの"海洋"が知的生命体だったのです。

一般的に"宇宙人"とか"地球外知的生命体"というと、どうしてもヒューマノイド型の「頭部と胴と四肢があるかたち」もしくは「タコみたいな火星人」なんかを連想してしまいがちですが。
そもそもそんな発想自体が狭いわけです。

地球から一歩そとに出てしまったら、我々の常識など通用しないのが宇宙です。
そんな人間のエゴをうまく扱った作品がこの小説『ソラリス』だと知り、別の意味で感動しました。

地球人とソラリスの海が互いに意思の疎通を図ろうとするのですが、我々よりも知的に発達した海がよこしたのは、地球人のように「言語」を使ったコミュニケーションではありませんでした…。
狂気の沙汰のような描写で頭がおかしくなりそうな恐怖感がありました。
でも万が一にも実際に未知の知的生命体と出会ったとしたら、こんなことが起こりうるかもしれないなとも思います。

説明的な科学理論や研究史が詳しく描写されているSFが苦手な方は楽しめないかもしれませんが、人類の身勝手さを考えさせられる深い作品です。


寺島実郎『ひとはなぜ戦争をするのか』(新刊)

進化論や生物学的な観点から「戦争」を論じたものを期待していましたが、比較的近代~現代の戦争責任や国際情勢、国家間の話が中心でした。

それはそうと、雑誌『世界』に連載されていたコーナーのダイジェストのようです。
それを知ってから、あぁなるほど確かに『世界』が扱いそうなネタだなと納得です。

『世界』は左翼の匂いがプンプンする雑誌ですが、大学の図書館で購読していたので、学生時代には毎号読んでいました。

世界 2018年 04 月号 [雑誌]

世界 2018年 04 月号 [雑誌]

ちなみに「人はなぜ戦争をするか」、私にそれを一番教えてくれた本はホーガンの『星を継ぐもの』シリーズでした。

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)


Newtonライト『超ひも理論』2017年10月

雑誌『Newton』の別冊、『Newtonライト』というティーン向けの刊行誌があることは知りませんでした。
見開きで1つずつ見出しが発展していき、簡潔な説明とオールカラーの図解が分かりやすい!
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超ひも理論は本当にわくわくする分野ですが、私のような浅学非才の文系人間にも分かりやすくまとめられていて、へたな超ひも理論入門書を読むよりオススメです。

やはり私は4次元~9次元の未知の世界に胸が熱くなります。
高次元を扱った映画『インターステラー』をまた観たくなりました。


エラン・マスタイ『時空のゆりかご』(新刊)

時空のゆりかご (ハヤカワ文庫SF)

時空のゆりかご (ハヤカワ文庫SF)

今読んでいるところです。


星野智幸『焔』(新刊)

焔

今読んでいるところです。


今井雅子『昔話法廷』

昔話法廷

昔話法廷

今読んでいるところです。


卒園式と着付けと小説『きもの』の話

■私もちょっと泣きました

私事ですが昨日は長女の卒園式でした。

ブカブカだった制服も短いくらいになり、堂々と歩き修了証書を受け取る姿や立派に返事をする声にこみ上げるものがありました。

担任教諭が証書授与で呼名する前にマイクに向かって

毎日が皆さんとの笑い声が溢れる幸せな日々でした。皆の名前を呼ぶのもこれで最後です。

と話しながら途中 涙で声が出なくなったところで、保護者も涙腺崩壊(ToT)

卒園児も、歌いながら立てなくなるほど嗚咽する男の子までいて、温かいハレの日になりました。


はじめてつかう漢字字典

はじめてつかう漢字字典

卒園のプレゼントにこちらの漢字字典をいただき、親子ともに大喜び。
表紙に幼稚園名と「卒園記念」の文字の金刻印入り。

娘は本を読みながら自然に低学年の漢字を覚えてしまったようですが、私は教育ママではないので基本的に放置してます(笑)



■久々に礼装を

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さて昨日は久しぶりに訪問着を着ました。

分かりづらいですが、山吹色の伊達襟を使っています。
いつも差し色で悩むんですよね。
(おっと帯締めがズレている!)
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帯揚げは今回初めて使ったかな?かなり昔に買ったので忘れましたが、金色が盛ってありかなりのお気に入りです。
関西に住んでいた頃は、帯揚げは横一直線に整えるのが多かったのですが、現在の居住地では左右に緩やかな山をつくるのが主流なようです。
帯締めは礼装用ではありませんが、ややドレスダウンということで。
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主役は子供ですが、失礼のないように、恥をかかせないように…母親も着るものってこんなに悩むものなのですね。
4月にはまた違う色の訪問着を着る予定です。
入学式と入園式があるから、帯や小物を変えようかな~など漠然と考えています。


それにしても今回は、なんと上半身の補整を忘れてしまい

Σ( ; ゜Д゜ノ)ノウヒョー

帯まで締め終わったところで補整タオルが1枚ポツン…

前日から周到に準備したはずなのに、これまで何十回と着物を着ましたが、こんなこと初めてです(笑)

私の住んでいる地域は平日でもちらほら小紋の方を見かけるくらい着物が身近なのか、卒園式でも一学年の1割以上が和服、園長(女性)も色留め袖でした。
だから周りの目も肥えているような気がして、無意識にかなり緊張していたのでしょう。

それでも何とか事なきを得ました。(たぶん。)



■着物を扱ったオススメ小説

唐突ですがここで、私の好きな着物を題材にした文学作品をご紹介します。

着物をお召しになる方はご存知の方も多いかもしれませんが、私も好きな作品です。
(20代の頃に読んだので細かいことは忘れていますが)

明治から大正(昭和)にかけて生きた主人公るつ子の日々と成長を描いた物語で、
控えめなるつ子に対し、姉が美しく着道楽なのがスパイシーだった覚えがあります。

きもの (新潮文庫)

きもの (新潮文庫)

この物語の特徴は、「きもの」を軸に人々が抱える日常や感情、人物の個性や人間関係が描かれており、「きもの」にまつわる礼法や暮らしの知恵、古風な美意識といった、古きよき日本を感じられることです。
「きもの」の色かたちが様々な情景を写し出していて、衣服がこれほどまでに人を映し出すカガミであることや、着ることに執着する女のサガも剥き出しで、なんだかそんな人間臭さにのめり込んでしまった記憶があります。

時代背景や着るものが違う現代人でも、女の幸福、嫉妬、虚栄心、絶望失望、焦燥感、羨望、希望、、、といった人間的な感情に共感してしまいます。
登場人物の女性陣も実に個性豊かで、共感できる人物、嫌悪してしまう人物、自分に似ている人物…多くの女性との出会いを私自身が疑似体験した気分になりました。

どんな時代でも女は自分なりの美しさや幸せを求めてもがく、そんな姿にシニカルにも共感できる小説です。


他にも着物に関する小説やエッセイは沢山あるのですが、今日はこのあたりにしておきます。


様々な絶望のカタチに出会ってみる~頭木弘樹『絶望図書館』(準新刊)

■失恋したらバラードを聴くか?ヘビメタを聴くか?

落ち込んだときの立ち直り方ってそれぞれだと思います。
若い頃たまに話題に上がったのが「失恋したら恋愛ソングを聴いて浸って泣くか?あえて激しい音楽を聴きたくなるか?」というもの。

私はいかにも「お涙ちょうだい」的なものが好きではありませんので、慰めてくれるバラードどころか音楽を聴いて浸って泣く、というロマンチストな発想もありません(^^;

せいぜい街でふと流れてきた曲を聴いて「彼が運転する車の中でこの曲を聴いたな」など、思い出がよみがえった程度でしょうか。

しかし友人は、あえてヘビメタやロックを聴いて、シャウトするボーカルやギターを叩き壊すギタリストに自己投影すると、少しは心が晴れると言っていました。


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そんな私も実際に最近、失恋ではないのですが(笑)酷く落ち込んでいたことがありまして。

音楽ではなく本の力を借りてみました。

その本は、バラードのように慰めてくれるようなエッセイでも心を奮い立たせてくれる啓発書でもなく、意外にも叩き壊されたギター(そっち?!)のような、絶望的な題材ばかりを扱ったものだったように感じます。



■他人の絶望に出会ってみる

他人の大変な状況と見比べて、「自分の状況はまだマシだ」というような発想は、私はあまり好きではありません。

でもフィクションの世界なら許されるのだということを今回経験して、少し気持ちがラクになりました。


こちらはタイトル通り、「立ち直れないときに寄り添ってくれる」絶望的な短編物語ばかり12編を集めたアンソロジーです。

4種類の絶望が[閲覧室]としてカテゴライズされています。

第一閲覧室
「人がこわい」という心理に関する3編

第二閲覧
「運命が受け入れられない」という葛藤の物語4編

第三閲覧室
「家族に耐えられない」という悩みを扱った3編

第四閲覧室
「よるべなくてせつない」という苦しさを描いた2編



■読んでみて

12編の中でも私の絶望感に寄り添ってくれたのは、次の物語4編でした。


筒井康隆『最悪の接触~ワーストコンタクト』
[どう頑張っても話が通じない人がいるという絶望に]

実験的に宇宙人と地球人が共同生活を試みるというSFなのですが、話が噛み合わなすぎて喜劇のようでした。
もうここまで意思の疎通ができずメチャクチャだと、地球人同士で話が通じないイライラなんて、かわいいもんだと思えてきます。


②W・アイリッシュ『瞳の奥の殺人』
[起きてほしくないことを止められない絶望に]

意識はシッカリしているが瞬きしかできない植物人間の老母。
あるとき息子の嫁とその愛人が、息子を殺す計画を話しているのを聞いてしまいます。
なんとか殺人計画を息子に伝えて阻止したいけれど、そんな願いも虚しく犯行計画がすぐそばで実行されてしまうことに…。

サスペンスで普通に読み物として面白かったのですが、もうこの老母ほどの不幸なんてないだろうなと、とことん一緒に絶望気分を味わいました。


安部公房『鞄』
[人生の選択肢が限られているという絶望に]

主人公は、"この重たい荷物を持っているために、行ける場所が限られている"と主張します。

人生には色々な足枷があって選択肢が限られてしまうことがあるけれど、ある意味、無限の選択肢があって途方に暮れるよりもラクなんじなかいかと思うこともあります。


手塚治虫『ハッスルピノコ』~ブラックジャックより~(コミック)
[居場所がどこにもないという絶望に]

ピノコは、ブラックジャックがある女性の細胞からつくった人造人間です。(だったかな?)
年齢は19歳ながらも見た目と知能は幼女のため、学校に入りたくても入れてもらえません。
それどころか肉親や自分の家という概念も持っていないような絶望的な存在で…。

生まれてしまった意味を否定的に考えざるを得ないピノコを思うと、自分が普通にこの社会で生きていること、家族をもっていること、アイデンティティのある人間として扱われていることが奇跡にさえ思えました。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

世界にはこれだけ多様な絶望があり得るとは、本を読んだり映画を観たりしない限り私には考えも及びません。
人間は色々な絶望を思い付くし、様々な状況を絶望と見なすのですね。

文学の中にはメチャクチャに叩き壊されたギターのような絶望を抱きながらも、なんとか生きている人たちが大勢いました。



ひなまつりと「飾り切り」の素敵な本

昨日はひなまつりだったので、せっかくなので今日はお料理に絡めてオススメの本をご紹介してみようと思います。

今週のお題「ひな祭り」

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キャラ弁とかは無理だけど

キャラ弁のような手の込んだものを日常的に作るのは、私には無理です(^^;

ですが、日本(だけではないですが)には昔から、彩りよく美しく盛り付けて、見た目にも美味しく料理を楽しむ文化はあります。

私はそんな日本人の美意識は素晴らしいと思っていて、もちろんプロの板前さんのようにはいかないけれど、せめて季節の行事のときにはエッセンス位は取り入れたいなと思っています。



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長女1歳前後のカミカミ期の離乳食(軟飯、寒天ゼリーなど)


ひなまつりは、そんな行事のなかでも娘たちが特に楽しみにしています。

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芋ようかんに、何を混ぜたらひなまつりカラーになるかな?
なんて試行錯誤もたのしくて。
これはパプリカパウダーと抹茶か何かを入れました。
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色と形を組み合わせれば、ひなまつりっぽくなりますね(^^;
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ひなまつりに限らず他にもデコプレートは離乳食時代から沢山作ってきましたが、

すみません、この画像は私が昔から書いている別の子育てブログの過去記事からもってきました(;´д`)



今年のひなまつりは長女のスポーツ系習い事の大会があり、朝から晩までバタバタしていて、ちらし寿司とハマグリ汁と買ってきた和菓子で許してもらいました(^^;


■飾り切りの素敵な本

レシピ本は必要に迫られないと開かないのですが、こういったピンポイントの技術などを見るのは好きです。

飾り切りや盛り付け、テーブルコーディネートなど色々ありますが、今回は飾り切りの本を。

↑見ている分には面白くて、技術と美意識の高さに溜め息が出ます。
ですがこちらは、プロの板前さんという感じでしょうか。
一種類の食材で完結するものだけでなく、異素材を組み合わせたものなどは、素人がちょっと見て真似できるものではありません(^^;

野菜の切り方BOOK &究極のシンプル野菜料理全167点 (LEE クッキング) (LEE COOKING)

野菜の切り方BOOK &究極のシンプル野菜料理全167点 (LEE クッキング) (LEE COOKING)

カンタンかわいい「飾り切り」―子どもが大喜びする!

カンタンかわいい「飾り切り」―子どもが大喜びする!

↑こちらはちょっと冷蔵庫に余っているお野菜に一手間加えて、皿に添えたり弁当に入れたりするだけで華やぐ、主婦にも真似しやすい作例が多いと感じます。

作っていて楽しいですね。


しかしなんというか…食いしん坊なのでお料理は好きは好きですが、「食」というこの世界は深遠すぎるので、凝りだしたらキリがなさそうというか、あまり深入りしないようにしています。


美味礼讃 (上) (岩波文庫 赤 524-1)

美味礼讃 (上) (岩波文庫 赤 524-1)

美味礼讃 下 (岩波文庫 赤 524-2)

美味礼讃 下 (岩波文庫 赤 524-2)

美味しいもの好きな方には一読をオススメしたい本です。

booksformams.hatenablog.com



今月読んだ本2018年2月

確定申告が終わり、肩の荷が降りました。

申告会場近くの椅子のある大きな書店で新刊4冊ほどをチェックし(笑)、今帰り道です。

が、ちょっと書評の記事が追い付かないので今月読んだ本を記録しておきます。

今月後半はライトな内容のものをのんびり読み進めました。

 

 

いい子を悩ます 強迫性・パーソナリティ「障害」 全対応版Q&A

いい子を悩ます 強迫性・パーソナリティ「障害」 全対応版Q&A

 

 

 

鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー)

鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー)

 

 (この2冊は以前に載せました)

 

 

 

 

35歳の教科書―今から始める戦略的人生計画

35歳の教科書―今から始める戦略的人生計画

 

 

 

 ↑これ絶望的でよかった!

 

 

こどもに伝えたい今も昔も大切な100のことば―みんなのたあ坊の菜根譚

こどもに伝えたい今も昔も大切な100のことば―みんなのたあ坊の菜根譚

 

 ↑私よりも6歳の娘が気に入って読んでいた。



その他、児童書と絵本を何冊か。



↓今この2冊を読んでいてもうすぐ終わります。



おもしろい世界の風刺画 (OAK MOOK)

おもしろい世界の風刺画 (OAK MOOK)

 

 

 

Newton(ニュートン) 2018年 01 月号 [雑誌]

Newton(ニュートン) 2018年 01 月号 [雑誌]

 


 

 

3月1日からコレ読みます。

 

終末のフール (集英社文庫)

終末のフール (集英社文庫)