とりあえず思いつく本を挙げておきます

母になっても読書は日課。本の記録と紹介のブログです。(3ヶ月以内に出版されたものを「新刊」、概ね半年以内に出版されたものを「準新刊」としています)

モハメド・オマル・アブディン『わが盲想』

視覚障害をもつスーダン人 モハメドさんが19歳で日本に移住し、10年以上を日本で暮らすなかで綴った極上のエッセイです。

エッセイと一言でいっても、「盲人がとらえる世界」「外国人から見た日本」「日本の中での外国人」という3つの視点を味わえて新鮮でした。

19歳から日本語を学びはじめた外国人とは思えないほど文章も巧みで文学性もあり、軽快で読みやすいうえ笑いもあります。
特に日本語を使ったオヤジギャグに度肝を抜かれますww

視覚に頼れない分、話し言葉や音への感覚が研ぎ澄まされるのだそうです。

わが盲想 (一般書)

わが盲想 (一般書)

ハメドさんは鍼を学ぶために来日しますが、目が見えない上に未知の国に渡来し、数多くの困難を乗り越えていきます。
先を言ってしまうと彼は鍼の道ではなく研究の道に進み、結婚もして今では父にもなっています。
(そこに行き着くまでのエピソードが一番のネタなので、これはネタバレではありません。)

私は目が見えたって海外旅行さえ不安があるのに、盲目なうえ言葉も通じない未知の国に住むなんて、すごい度胸だなと思いました。

けれど読み進めていくうち、日本が一定以上の平和を保っていること、これでも障害者福祉が整っている部類に入るということ、やはり親切な国民性があることが彼を助けたのかなと思うようになりました。
(福祉に関しては先進国の中では低水準と言われていますがね(^^;)

ハメド氏の持ち味は、ユーモラスな人間性や勤勉さ、そして何より出会い運の良さだと思います。
これらがあったから日本で受け入れられたのでしょう。
一人の人間の人生をエッセイというかたちで知り、''事実は小説より奇なり''とい言葉通り、人生のドラマを感じました。

学問での挫折やイスラム教徒の飲酒、異文化での人間関係、結婚制度、大学生の就活問題などなど、人生の重要な時期を日本で過ごした外国人を通して、日本社会を客観視することもできると思います。
とても鮮やかでユーモアのある情景描写がされていて、つい目の見えない方の''視点''であることを忘れてしまいそうになりました。

どちらかというとエッセイは得意でない私ですが、読んでよかった一冊でした。



「考える人」は本を読む (角川新書)

「考える人」は本を読む (角川新書)

『ぼくらの仕事は応援団。』に引き続き、こちらで紹介されていた一冊です。