食と海外と人生を一度に楽しめるエッセイ~太田哲雄『アマゾンの料理人』(準新刊)
食、海外、アクティブな人生のいずれかに興味のある方にオススメの、個性派(?)料理人が書いたエッセイです。
アマゾンの料理人 世界一の“美味しい”を探して僕が行き着いた場所
- 作者: 太田哲雄
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/01/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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【あらすじ】
太田シェフは学生時代、なけなしのスーツを着て有名レストランを食べ歩き、貯めた小遣いは全て料理に消えるというようなユニークな若者でした。
そんな料理好きが高じて、ついに料理人としてイタリアやスペインでの修行に出ます。
しかもそれが「エル・ブジ」など世界一といわれる高級レストランに勤めたり、リアルセレブのマダムの家でお抱え料理人として働いたりと、異色の経歴の持ち主です。
けれど太田シェフは、世界最高峰の料理の現場を経験するなかで、次第に"贅沢"な料理に疑問を抱いていきます。
そんな中アマゾンの料理や食材に出会い、衝撃を受けました。
飾られた華美な料理よりも、現地でしか味わえない素朴な食材にこそ、魅力を見出だしたのでした。
その後の彼も自分の店をもつという枠にはまらず、彼の料理人としての探求と挑戦は続いていきます。
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とにかく彼はフットワークの軽い行動派で、とてもカッコイイ30代だと思いました。
もう、我が儘マダムの無茶な料理リクエストだとか、レストランのコネで仕事がつながっていく話だとか、出会う人のキャラも濃いしエピソード自体が十分に面白くて、一気読みでした。
旅行では分からない、職業人の目を通した海外での暮らしや文化を知るのも興味深いです。
けれどもエピソードに埋もれず心に響くのは、彼の料理に対する哲学でした。
特にアマゾンに出入りするようになってから、彼の中の料理への熱はまた新しい熱を帯びていきます。
彼の食材に対する誠実さも加わっていくのです。
東京では、いまや世界中のありとあらゆる食材が手に入る。それが豊かさの象徴だが、アマゾンにはそこでしか手に入らないものがたくさんある。これも豊かさだ。
p.227
僕は、アマゾンの食材を、もっと広く多くの人に知ってもらいたいと思っている。
(略)
それはまさに、生物同士の真剣な命のやりとりだからだ。
p.195
まさに「食」は「生」に直結することを教えられました。
太田シェフがいきなりアマゾンに行ったのではここまで感銘を受けることはなかったと思います。
ある意味両極端というか、世界トップレベルの料理界を経験した上での「アマゾン」だからとても説得力がありました。
料理だけでなく、フィールドの異なるどんな仕事でも、自分にできること・やりたいことを何かしなくては!と思わせてくれる自伝でした。
ついでにいうと、私も料理はわりとすきなんですが「レシピは読んでいるだけで面白いもの」という感覚があることを、初めて知ったなぁ(笑)