とりあえず思いつく本を挙げておきます

母になっても読書は日課。本の記録と紹介のブログです。(3ヶ月以内に出版されたものを「新刊」、概ね半年以内に出版されたものを「準新刊」としています)

『なごや子ども貧困白書』

名古屋が抱える現代の青少年問題について論じた白書です。
有識者によるアンソロジーで、産婦人科医、児童養護施設、地域の児童館、里親制度、名古屋駅周辺の夜回りなどなど、様々な立場から青少年の抱える問題を取り上げています。


なごや子ども貧困白書

なごや子ども貧困白書


青少年問題としては貧困を筆頭に、発達障害やひきこもり、望まない妊娠、小児うつ、不登校、非行などが挙げられますが、複数を抱えているケースも多く、またこれまでは これらの言葉ばかりが一人歩きしている感が否めませんでした。
名前は知っていても実態が一般的にどれだけ理解されているのかは甚だ疑問ということです。

その点 本書では特定の地域の事例や対策が具体的に見えることで、青少年問題は実はすぐに隣で起きているかもしれないという危機感を与えられました。
何となく分かったような気になっていた社会の根底の問題を、可視化されたことに意味があると思います。
また子ども問題に関わる施策は、例え金銭的な補助が親になされる場合であっても、どんな場合でも大人ではなく子どものためだということを忘れてはならないのだと改めて意識させられました。


青少年問題は誰もが陥る可能性があるという側面と、逆に当事者たちならではの共通点という側面もあるようです。

なにより、貧困など困難をもつ子どもは、その親も様々な問題や困難を抱えていると例外なく言えます。
それは父親の分からない妊娠出産、麻薬、低学力、コミュニティ障害、離婚、ひとり親家庭などを抱える母親のケースが多く、全てをいっしょくたに批判するわけでは決してありませんが、しかし要するに時間的にも心理的にも子どもと向き合う余裕のない親が多いという印象を受けました。

子ども達は安心、人の温もり、居場所、話し相手(愛してくれる相手)がないと自らそれを探すようになり、それがインターネットや夜の街での危険な人間関係の巣窟になってる例が多いのです。

本書に寄稿している有識者は、もちろんどの方も社会や青少年問題に真摯に向き合っている方ばかりです。
子どもの可能性を信じ、諦めずに対峙する方ばかりです。
しかし社会のもっと多くの方に、支援まで行かずとも、せめて認識や理解をされるだけでも難しさがあると思います。


私自身は正直なところ、これを読んでいて、問題認識とそれに対する具体的な施策といったような建設的な見方ではなく、どうしても「気の毒な子たち」とか「無責任な親たち」だとか、「ここに税金を投じるなんて!」「もっと先にやるべきことがあるだろう」など、感情的に読んでしまいました。
お恥ずかしいですがどこか他人事と捉えてしまっているのかも知れません。

本書を読んだからといってすぐに私一人が青少年問題のために何かできるわけではありませんが、しかし、子を育てることは自分の家族や血筋だけでなく社会に対して責任を追っているということを、親として忘れずにいることはできると思いました。