とりあえず思いつく本を挙げておきます

母になっても読書は日課。本の記録と紹介のブログです。(3ヶ月以内に出版されたものを「新刊」、概ね半年以内に出版されたものを「準新刊」としています)

大矢博子『歴史小説読みくらべガイド』(新刊)

細かい人名や年代が覚えられず、学生時代から"社会科"としての歴史が苦手だった私です。
それでも現在と異なる時代の物語は純粋に楽しめます。

とはいっても日本の時代小説は、パッと思い付く限りでは司馬遼太郎くらいしか読んだ記憶がありませんでした。
更に言うと、読んだ本の内容さえあまり記憶に残っていません。

そんなことを考えていたとき、新刊で『歴史・時代小説読み比べガイド』なるものを見つけたので読んでみることにしました。

こちらは一冊の本について詳しい書評が載っているのではなく、何らかのテーマにあった複数の作品がポンポンと挙げられていく、ブックトークのような進みかたです。

そのためそれぞれ作品の持ち味や特徴がジックリ伝わるというよりも、要旨や見所をかいつまんで紹介されています。
チラ見せされた情報に興味をひかれ、日本史が苦手な私でも気になる作品が沢山見つかりました。

それもそのはず、本書ではなんと176人の作家による488作品を載せているそうで、まずこれだけ多くの歴史・時代小説が存在することに驚かされます。

著者の大矢さんはよくもこれだけの本を読んで、限られた情報量の中で「読んでみたい」と思わせる文章が書けるなと、ただただ感心します。
大矢さんはもともと書評ブロガーをされていた方なのですね。
そのため語り口調も軽快で、テンポのよい楽しいおしゃべりを聞いているような読みやすさがあります。


さて本書を読んでいくうちに、一言で「歴史小説」や「時代小説」といっても、具体的に自分が何に興味があるのかがよく見えてきました。
例えば私の場合、SFと明治維新に関わるテーマに一番読んでみたい作品が多かったように思います。

SFとして紹介されていたものは、現代人が過去にタイムスリップしてしまうようなものです。
(科学小説というよりファンタジーな気もしますが)
明治維新は当時の志士たちの男気あふれる生きざまに惹かれます。

三国志読み比べ」「関ヶ原の小説あれこれ」「幕末」といったワンテーマの読み比べから、大河ドラマや時代劇の原作や原案となった小説、果ては「江戸のお花見」「和菓子の話」「僧侶モテモテ小説」など歴史トリビアにまつわる時代小説まで、


上記の公式紹介文にもある通り、他にも多様なテーマと視点から歴史・時代小説が取り上げられています。


本書が単なる読書ガイドで終わらないのは、本の紹介だけでなく、日本の歴史の深さにや捉え方も伝わってくる点にあると思いました。
女性目線ということもあって、歴史を俯瞰するばかりでなく、そこに生きる個々人の心情にフォーカスされているのが窺い知れます。
歴史小説は堅苦しいものではなく、現代と変わらない人間の本質を教えてくれそうです。