とりあえず思いつく本を挙げておきます

母になっても読書は日課。本の記録と紹介のブログです。(3ヶ月以内に出版されたものを「新刊」、概ね半年以内に出版されたものを「準新刊」としています)

岡 南『天才と発達障害』

発達障害の方々は、非障害者と脳の使い方が異なるだけで 実はすごい能力をもっているのではないか?

そんなことを昔から考えていました。
(健常者、障碍者という言葉はここでは使いません)


そんなボンヤリとした考えのヒントになりそうな本を見つけたので、軽い気持ちで読んでみました。


脳の認知機能には「視覚優位」と「聴覚優位」という異なるタイプがあり、この特性が大きく偏ることで発達障害者になることがあるようです。
本書では、視覚優位の発達障害者として建築家のアントニオ・ガウディを、聴覚優位の発達障害者として児童文学作家のロイス・キャロルを紹介していました。

かなり、かなり、かなりザックリまとめると、

・ガウディは空間認識力に長けていて、文章の読み書きや聞き取りができなかった
・キャロルは文章の能力に長けていて、相貌失認(人の顔を見分けられない)などの困難を抱えていた

ということです。
まぁ要は、「障害と天才は紙一重」ということです。


ガウディ好きの私としては感想は沢山ありますが、中でも本書全体を通して印象に残ったのは

・人はそれぞれ視覚or聴覚の認知の仕方が異なるので、同じ事象でも見え方や聞こえ方も違う(←非障害者を含め)
・視覚or聴覚のどちらが優位かによって、有効な学習方法が異なる
・音楽や絵画などの才能も、視覚or聴覚認知の仕方が影響しているらしい(写実的な絵を描ける人が景色をどう捉えているかなど)

ということです。

読了してから、私の中での著名画家の捉え方が変わり、絵画を観るときの視点も少しだけ変わりました。
実生活でも、何度言葉で伝えても記憶できない人や、図面から立体を思い浮かべられない人など 様々な方に出会ってきましたが、これらは能力の有無というより認知の問題なのだと分かりました。

こういう視覚優位・聴覚優位の特性の相違が、コミュニケーションでも軽蔑や噛み合わなさを生んでいるのでしょう。

それにしても、脳ミソ関係の本を読むたびに思うことですが、人間の脳って本当に複雑で神秘的です。


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本書はハッキリ言って、学術研究ではなく著者の主観がかなり入っていると感じます。
著者は視覚優位の発達障害当事者らしいので、だからこそのよさだと割りきって読むと、突っ込みどころも笑ってスルーできました。